研究課題/領域番号 |
22K04014
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
荒木 望 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (10453151)
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研究分担者 |
中谷 真太朗 鳥取大学, 工学研究科, 講師 (10781700)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ブレイン・コンピュータ・インタフェース / 定常状態視覚誘発電位 / 視交叉 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,一定周期の明滅を提示する視覚刺激により発現する脳波(定常状態視覚誘発電位: SSVEP)を利用した視覚刺激型ブレイン・コンピュータ・インタフェース(BCI)において,ヒトの視神経の生理学的な特徴によって生じる脳波の強度分布を用いる新たな手法の確立を目指している. 令和4年度の「注視点に対する刺激位置の変化と視覚野での SSVEP の強度分布調査」の結果,刺激位置と視覚野での強度分布パターンが,当初予想していた注視点に対して刺激位置と同側の脳波強度が増加するパターンに加えて,刺激位置と逆側の脳波強度が増加するパターン,刺激位置に関わらず左右いずれかの片側の脳波強度が増加するパターンの3パターンが存在することを確認した. 令和5年度は,この原因が実験参加者の選択的注意が注視点以外に向いている可能性についての検討を行った.ここでは,これまでの実験系に加えて新たに注視点に文字を一定間隔でランダムに表示し,指定した文字が表示されたときのみ実験参加者にボタンを押してもらうことで実験参加者の注意が注視点のみに向くようにすることで,強度分布の変化が生じるかを確認した.その結果,一部の実験参加者では刺激位置を変化させたときの右脳側と左脳側の差異が大きくなるなどの変化が見られたが,左右での脳波強度が反転するような変化は見られず,強度分布パターンの違いに対する主要因ではないことが明らかとなった. また,現在の刺激位置に対するSSVEP強度による反応評価に加えて,SSVEPの位相についても解析を行ったところ,一部の実験参加者では強度による評価よりもより顕著に刺激位置の差異が表れることが分かった.このため,今後は参加者毎で発現パターンが異なることを前提とし,強度および位相の両面から刺激位置と脳波の空間分布の関係式の構築とそのインターフェイスへの応用について検討を行っていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で目的とする「ヒトの視神経の生理学的な特徴によって生じる脳波の強度分布を用いる新たな BCI 手法の確立」を達成する上で重要となる項目は,(1) 注視点に対する刺激位置の変化と視覚野での SSVEP の強度分布調査,(2) 刺激位置と SSVEP 強度分布との関係式構築,の2点である. 令和5年度は,令和4年度の調査で明らかとなった (1) についての刺激位置と強度分布の3つのパターンについて,実験参加者の選択的注意を注視点に向けることで一般化することが出来ないか検討を行った.追加実験などを行った結果,一部の実験参加者では刺激位置を変化させたときの右脳側と左脳側の差異が大きくなるなどの変化が見られたが,左右での脳波強度が反転するような変化は見られず,選択的注意が強度分布パターンの違いに対する主要因ではないことが明らかとなった.このため,(2)の「刺激位置と SSVEP 強度分布との関係式構築」については実験参加者毎で発現パターンが異なることを前提とし,個別に関係式の構築を検討するものとする.また,今年度新たな試みとして,刺激位置に対するSSVEP強度による反応評価に加えて,SSVEPの位相についても解析を行ったところ,一部の実験参加者では強度による評価よりもより顕著に刺激位置の差異が表れることが分かった. 上記の確認を実施するために研究計画に若干遅れが生じているが,各パターンで刺激位置毎に強度および位相の分布が変化することは確認しているため,今後は関係式の構築およびこれを利用したインタフェースの構築を進めていく.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の検証結果より,参加者毎で発現パターンが異なることを前提とし,強度および位相の両面から当初の目標である刺激位置と脳波の空間分布の関係式の構築を行っていく. また,今後は特に得られた結果のインタフェース応用に重点を置き,システムの構築と検証を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,前年度に購入した視線追跡装置が当初計画していた装置よりも同等性能で安価であったことに起因する. 次年度使用額については,今後構築を目指しているインタフェース関連の装置および実験系の構築で使用する予定である.
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