研究実績の概要 |
シンチレータに共賦活イオンを共賦活すると発光収量が増大したり燐光が抑えられたりシンチレーション特性が改善することがある。この現象における共賦活イオンの役割を明らかにすることが本研究の目的である。共賦活するドーパントとして、特性改善の実績があるGd2SiO5:Ce,ZrとCs2HfCl6:Ce,Zrにおいて、ジルコニウムがセリウムと同じように格子点を占めうるか、占めうる場合には電荷不一致の状況をどのように解消するのか、これらの点を明らかにするために、発光分光実験に加えてX線吸収微細構造(XAFS)実験とガンマ線陽電子消滅分光(GiPAS)を行う。
2022年度の研究はにはGd2SiO5:Ce,ZrにおいてZrの果たす役割が電荷補償体でないことを突き止めていた。2023年度はCs2HfCl:Ce,Zrの結晶育成をブリッジマン法で行い、単結晶を得ることに成功した。一方、XAFS実験やGiPAS実験を計画していたが、結晶の育成に時間をついやしてしまったことと、予定していたXAFS実験のビームタイムが十分に確保できなかったこともあり、これらの実験を行うことができなった。2024年度にはこれらの実験を実施してCs2HfCl6:Ce,Zrにおけるジルコニウム共賦活効果を調べる。2022年度に行ったGd2SiO5:Ce,Zrでは、ジルコニウム共添加によって空孔型欠陥や発光イオンの価数に変化は見られなかったが、結晶の透明度が著しく改善されることを見出してきた。これが、Cs2HfCl6:Ce,Zrでも成り立つシナリオかどうかを実際に明らかにしたい。
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