研究課題/領域番号 |
22K04690
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
菊池 丈幸 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (50316048)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高密度磁気記録 / ヘキサフェライト / FORC解析 |
研究実績の概要 |
本研究は,年々増加し続けているデジタルデータの長期保管に適したテープ式磁気記録媒体向けのM型ヘキサフェライトナノ粒子の作製を錯体重合法を用いた低温合成により実現し,得られた磁性ナノ粒子のミクロ磁気構造を詳細に解析することを研究目的としている. 2023年度は,Sr系のみならずCa系M型フェライトについても,合成プロセスの最適化によるM型フェライトの低温合成と,粒子微細化を目標として,種々の条件下で検討を行った.主に出発組成,熱処理温度,時間,回数を操作因子として,M型相の生成過程における定量的な解析を,粉末X線回折パターンのReitveld解析を用いて行った.その結果,M型ヘキサフェライトの合成温度の低温化に成功した.特にCa系については,通常の合成法ではM型単相を得るために必要とされる希土類元素による置換が,錯体重合法による合成においては不要となる可能性も見出した.出発組成を不定比組成まで拡大し,広範な組成範囲でM型相の安定生成条件を探索したところ,複数の組成域において異なる格子定数のM型相を得ることに成功している.しかしながら,Sr系と比較するとCa系におけるM型相の生成温度が高いことから,十分な粒子の微細化には至っておらず,得られたCa系M型フェライト粒子の磁化測定結果から,保磁力は1500~3500 Oeと磁気記録媒体向けには適切な値を得られているが,これが本質的に結晶磁気異方性を反映したものか,望ましくない結晶成長によって生じた磁区構造によるものか,については,等温磁化曲線のFORC解析による詳細な検討が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Sr系,Ca系ともにM型フェライトの単相合成条件を低温化し,結晶成長を抑制した微粒子の作製条件が明らかになりつつあるが,本研究の主題のひとつである等温磁化曲線のFORC解析については,その測定を外部委託する研究計画であったものの,十分な測定試料をそろえることができていないことや,依頼測定の費用,日程などの調整に難航している.
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今後の研究の推進方策 |
等温磁化曲線のFORC解析については,所属研究機関に新たに導入された振動試料型磁力計(VSM)を使用した測定が可能となったため,今後は測定試料の作製と並行してM型フェライトのFORC解析に適した測定条件の確立を目指して,種々の測定条件について検討を行う予定である.また合成温度の低温化が不十分なCa系M型フェライトについては,FORC解析の結果をフィードバックしながら,より低温でM型相の生成を促進する因子について探索を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に予定していたFORC測定の外部委託の測定試料準備,および日程と予算調整に難航したため測定が実施できなかった.FORC測定については,学内の共通設備(VSM装置)による測定が可能となったことから,外部委託の必要がなくなったため,当該装置の測定精度の向上に資する少額の備品(主に磁場測定装置)購入を検討する.
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