研究課題/領域番号 |
22K05070
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
真崎 康博 北里大学, 理学部, 教授 (60199677)
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研究分担者 |
長谷川 真士 北里大学, 理学部, 講師 (20438120)
上田 将史 北里大学, 理学部, 助教 (60778611)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | チエノアセン / 大環状分子 / 多孔質材料 / 分子性集合体 / 酸化還元特性 / ナノリング / ナノベルト |
研究実績の概要 |
固体の内部にナノサイズの空孔を有する多孔質材料は,小分子の貯蔵・輸送や分離精製の機能を持つ固体材料として期待されている.また,細孔内にイオンキャリア分子を導入することで,高イオン伝導の発現が期待できるため,とりわけ二次電池の固体電解質として有望である.しかしながら,一般的な多孔質材料として知られている金属有機構造体(MOF)や共有結合性有機構造体(COF)は酸化還元に関与しない原子によってその骨格の大部分が構成されているため,単位重量あたりに換算した電子容量が活物質材料としての期待値に満たないという問題を抱えている.本課題では,酸化還元活性なチエノアセン類を単位構成ユニットとした大環状分子を緻密に集積させることで,ナノサイズの空孔チャネルを構築し,各状態(ゲル・薄膜・固体)における電気伝導性や充放電特性などの酸化還元特性を中心とした機能開拓を行う. 本年度は,チオフェン, ジチエノチオフェン, チアントレン, テトラチアペンタセンなどの含硫黄複素環化合物類を構成ユニットとする大環状分子の合成に成功し,一部の分子については,結晶状態においてチャネル構造の構築に成功した.チャネル内にヘキサンやクロロホルム,二硫化炭素,ベンゼン,トルエンなどのゲスト溶媒分子を取り込むことも明らかになっており,開発した分子が多孔質材料として有望な素質を有していることを見出した. 今後は,分子構造とチャネル構造構築の相関について明らかにするとともに,良好な酸化還元活性を示す分子についてはコイン型の簡易電池を作製し,充放電特性について調査していく.一方,固体状態において微弱な発光を示す分子も合成することができたため,発光特性についても調査し,含硫黄多孔質材料の機能開拓を行なっていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チオフェンやジチエノチオフェン,チアントレンやテトラチアペンタセンなどの含硫黄芳香族炭化水素類を基本構成ユニットとした新規大環状分子の合成に成功し,一部の分子については分子構造をX線結晶構造解析によって決定した.硫黄原子の結合角に基づいた多角形構造をとっており,特異な分子骨格の分子タイリングに基づいた分子配列の制御によって,チャネル構造の構築に成功した.加えて,チャネル内の空隙にはヘキサンやクロロホルム,二硫化炭素,ベンゼン, トルエンなどの溶媒分子を取り込めることが分かっており,多孔質材料としての有用性を見出すことができた.今回開発に成功した分子群は酸化還元活性なユニットを導入したことに由来して,溶液中において良好な酸化還元特性を示していることから,今後,電気伝導性やイオン伝導性について調査を行う予定である.また,一部の分子は溶液・結晶状態で微弱な蛍光発光を示したため,発光特性についても調査し,含硫黄多孔質材料の機能開拓を進めていく.
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今後の研究の推進方策 |
既に合成に成功した分子については,収率の向上を目指すともに,分子構造とチャネル構造構築の相関について明らかにしていく.さらに比表面積の定量化を行なっていく.良好な酸化還元特性を示した分子については正極活物質としてコインセルに封入した簡易型電池を作製し,充放電特性(繰り返し特性・レート特性)に関する調査を行う.良好なレート特性を示した分子については,インピーダンス測定によってイオン伝導度を求め,酸化還元活性な多孔質材料としての性能を評価していく.また,固体発光を示した分子については,各状態(溶液・固体)の発光挙動を比較し,分子構造および集積構造の励起状態におけるダイナミクスを捉え,発光性多孔質材料としての可能性を追求していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
標的分子の合成が首尾よく進み,合成試薬の節約ができたため.次年度使用額は消耗品費(有機合成試薬など)や旅費として使用する予定である.
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