骨髄異形成症候群(Myelodysplastic Syndromes: MDS)は血球生産の異常などを特徴とする造血器腫瘍であり、一部の患者では急性白血病に進行する危険な疾患である。近年、大規模な遺伝子配列解析によって、MDS患者ではRNAスプライシングに関わるタンパク質に高頻度な変異が生じていることが報告された。本研究では、その中でもZRSR2やSRSF2などのスプライシング因子のアミノ酸変異が、どのようにスプライシング異常を引き起こし、病気の原因になるのかを明らかにすることを目的とした。1残基のアミノ酸変異による微小な構造変化を議論するために高分解能でのX線結晶構造解析を計画し、タンパク質試料の調製や結晶化、構造解析を実施した。 ZRSR2はマイナーイントロンのスプライシング開始段階においてスプライシング部位を認識する働きをもち、その変異がMDS患者において高頻度に検出されることが報告されている。これまで、主にタンパク質試料の大量調製について検討を行い、高純度なZRSR2のタンパク質試料を大量に調製することができた。しかしながら、構造解析に適した結晶を得ることはできておらず、さらなる条件検討を行なっていく予定である。 またSRSF2は、mRNA前駆体中のExonic Splicing Enhancer(ESE)と呼ばれる配列に結合し、スプライシング反応を促進するタンパク質であり、遺伝子解析により MDS患者から、ホットスポット変異とされるPro95のHis/Leu/Argへの 変異が検出されている。今回、SRSF2の野生型(Wild-Type: WT)及び変異体について、ESEを含むRNAとの複合体のX線結晶構造解析を行った。その結果、高分解能での構造解析に成功し、得られた複合体構造を比較することでRNA認識機構の違いを明らかにした。
|