研究実績の概要 |
本研究課題は、研究代表者が同定した筋形成型オリゴDNA(抗ヌクレオリンアプタマー)について、希少性筋疾患に対する薬理効果を検討し、臨床応用を目指した基礎研究と技術開発を行うものである。本年度は、申請書に記載した3つのテーマ、(1)顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーに対する筋形成型オリゴDNAの薬理効果、(2)横紋筋肉腫に対する筋形成型オリゴDNAの薬理効果、(3)筋形成型オリゴDNAの輸送技術について、以下の研究を行った。 (1)について、共同研究者である信州大学基盤研究支援センターの吉沢隆浩博士が樹立した顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーモデルマウスから骨格筋芽細胞を採取・培養し、同疾患のin vitroモデルを確立した。モデルマウスの筋芽細胞は、正常な筋芽細胞と比較して筋形成能が劣ることが確認された。今後、このin vitroモデルを用いて筋形成型オリゴDNAの薬理効果を検討していく。 (2)に関しては、筋形成型オリゴDNAが横紋筋肉腫の分化を誘導して増殖を抑制する効果について、in vitroの解析結果を原著論文として発表した(Nohira et al., Biomedicines, 2022; 10: 2691)。また、ヌードマウスにヒト横紋筋肉腫細胞を異種移植したモデルの作成を開始した。今後、このモデルマウスを用いて筋形成型オリゴDNAの安全性と薬理効果をin vivoで検討していく。 (3)については、原薬企業の核酸無償提供事業によって大量の筋形成型オリゴDNAの提供を受けることができた。これにより、筋形成型オリゴDNAのドラッグデリバリーシステムの開発を進められる基盤が整った。今後、筋形成型オリゴDNAの脂質ナノ粒子化などによる運搬技術の検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
筋形成型オリゴDNAの横紋筋肉腫の増殖抑制効果(Nohira et al., Biomedicines, 2022; 10: 2691)、がん悪液質モデル筋芽細胞に対する抗炎症効果(Nihashi et al., Muscles, 2022; 1:1111-120)、および骨形成型オリゴDNAの同定(Nihashi et al., Nanomaterials, 2022; 12: 1680)について、研究代表者が責任著者である原著論文を査読付国際学術誌に発表した。また、2022年10月には、筋形成型オリゴDNAの応用に関する研究代表者の報告が、日本核酸研究フォーラムで優秀発表賞を受賞した。さらに、2022年8月には、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの治療に関する共同研究成果が日本筋学会で発表され、本研究課題の共同研究者が優秀賞を受賞した。加えて、筋形成型オリゴDNAに関する特許2件(特許7152001号、特許7166614号)が成立した。 以上の諸点から、本研究の成果が専門家等から評価されていると判断し、現在までの進捗状況を「当初の計画以上に進展している」とした。
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