研究実績の概要 |
申請者が確立したAID法は標的とするタンパク質をオーキシン依存的に分解することが可能であり、様々な真核生物種において、標的とするタンパク質の迅速なノックダウン系として用いられている(Nishimura et al., Nature Methods, 2009)。しかしながら、TIR1の導入や標的タンパク質へのAIDタグの付加など、実験に先立ち行わなければならないことも多い。また、過剰量のオーキシンがもたらす細胞毒性の問題も、避けては通れない問題であった。このような状況の中、申請者は動物細胞で簡便にAID細胞株を作製する方法を確立し(Nishimura and Fukagawa, Chromosome Res, 2017)、また、勘案事項の一つであった過剰量のオーキシン問題も、OsTIR1F74A変異体と人工合成オーキシンである5-Ad-IAAとの組み合わせにより1/1000にまで減少させることに成功した(Nishimura et al., Nucleic Acids res, 2020)。本年はナノボディと呼ばれる小分子抗体をこのssAID法に組み込み、ナノボディが認識したタンパク質を分解するAlissAID systemの構築を行った。その結果、真核生物のモデル生物である出芽酵母細胞において、GFPやmCherryなどの蛍光タンパク質を標的としたAlissAID systemの開発に成功した。出芽酵母細胞においてはGFPタグのクローンコレクションが存在しているため、これらの酵母株を利用することで簡便にAlissAID株を作製することができるため、このAlissAID systemは出芽酵母の分子遺伝学にとって重要なツールとなると考えられる。
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