研究課題/領域番号 |
22K05962
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
松浦 友紀子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60374245)
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研究分担者 |
若松 純一 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (30344493)
中下 留美子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00457839)
亀井 利活 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究主任 (50794765)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ニホンジカ / 肉質 / 極限pH / けん吊方法 / 年齢 / 生息環境 |
研究実績の概要 |
今年度も引き続き、正常肉の基準値作成に必要な極限pHの測定、及び肉質分析に用いる筋肉サンプルの収集と分析を進めた。安定同位体比及びけん吊の影響については、学会で報告を行った。 1.肉質の基準作成:pHによる肉質の評価基準を作成するために、銃で捕殺された51頭の背最長筋、25頭の大腿二頭筋、38頭の大腿四頭筋の極限pH値を収集した。また異常肉の指標としてわな個体10頭も測定した。銃個体から試算された基準値は、いずれの部位も海外基準(5.8)より高い傾向があり、異常を検出するための基準値は5.92-6.05程度になると考えられた。 2.生息環境による影響:森林と草地に生息する個体の安定同位体比分析を終え、新たに海岸周辺のサンプルを8個体確保した。また脂肪酸組成分析の実験系を立ち上げた。 3.性齢の影響:個体の性齢が肉質に与える影響を検討するために、検体となる個体の切歯を採取してセメント質年輪法により正確な年齢を明らかにした。その結果、これまでのサンプルの性齢は、1歳から16歳までのメス56頭、1歳から9歳までのオス29頭であった。これらの個体の筋肉について、かたさ及び色調を分析中である。 4.けん吊の影響:枝肉のけん吊方法(骨盤けん吊とアキレス腱けん吊)による肉質の違いについて分析を行った。骨盤けん吊個体は筋肉の形状が変化し、とくにうちももとそとももで顕著な変化が見られた。ヒレ以外の部分では骨盤けん吊により繊維方向に筋肉が伸びていた。筋肉の部位によっては、骨盤けん吊により肉の硬さが改善される可能性があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に引き続きシカの捕獲に用いる弾薬の入手が困難で価格の高騰が続いており、銃器による捕獲個体の入手が困難である。そのため、シカ肉処理場に搬入されるシカから検体の採取を進めるとともに、研究代表者と分担者自らが学術捕獲により自らサンプルを確保した(研究代表者は猟銃の所持許可を得ており、学術捕獲の許可等含めて経験も多い)。それにより、分析に耐えうる質の良いサンプルを多数確保できた。安定同位体比分析及び肉質分析も分担者によって計画通りに進められている。脂肪酸組成分析はまだ準備段階であるが、実験系は確立された。
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今後の研究の推進方策 |
肉質の基準作成及びけん吊の影響については、ある程度サンプル数も確保されたため、データまとめを進める。生息環境の影響については、海岸周辺に生息するシカのサンプルを増やし、脂肪酸組成の分析を進めて比較を行う。性齢の影響は、サンプル数が不足しているオスのサンプルを追加で採取し、年齢査定及び肉質分析を行う。最終年度のため、いずれもデータをまとめて結果を整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
シカの捕獲の成否は環境要因に左右されやすい。シカ肉処理場から入手予定であった筋肉サンプルについて、例年餌を求めて2-3月にシカが集まるため、これらが捕獲されるタイミングでのサンプリングを計画していた。しかし2023年度は例年と異なり、シカが集まる時期が遅く、4月に捕獲がされ始めた。そのため、2023年中(2024年2-3月)のサンプリングを予定していた分が、2024年度(2024年4月)のサンプリングとなり、支出時期がずれ込んだ。2024年4月に捕獲された個体からのサンプリングを開始している。
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