現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
犬人工肝臓の作出においては最終的には生体由来肝細胞と肝周囲組織を今日培養してスフェロイドを作製し、それを3Dプリンターで積層する計画である。3Dプリンターでスフェロイドを積層するためには、スフェロイドの形態及びサイズを一定にする必要がある。そのため、培地(Willium’s E, DMEM)の検討および添加因子に関して検討し、直径500umで球形のスフェロイドを安定して多数作製することを試みた。 質量分析に関しては、犬肝癌細胞(平面培養)、犬肝細胞(平面培養)に対して、肝細胞の薬物代謝における第一相反応の酵素であるチトクロムP450(CYP)が代謝することが報告されているテストステロンを100uMまたは50uMの濃度で添加し、0,2.4.6.8時間後に培養上清を回収した。各培養上清は、質量分析装置にてテストステロンとテストステロンが代謝された場合に出現するヒドロキシテストステロンの濃度を測定した。質量分析装置を用いた薬物代謝能の検討においては、テストステロンの至適添加濃度および添加後に回収する最適時間の検討を行った。現時点ではテストステロンの添加濃度は100uM、50uMで結果に差はないことがわかった。質量分析に関しては現在も継続して検討をしている。
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今後の研究の推進方策 |
3Dプリンターで積層するために最適なスフェロイドロイドを作製し、さらに長期間人工肝が生存を維持するためには、 肝細胞周囲組織との共培養および酸素の供給やアポトーシスの抑制が有効と考えられる。したがって、スフェロイド作製の際にエリスロポエチン、増殖因子(HGF、FGF7など)やサイトカイン(IL1, 6など)を加え、長期生存を目指す。細胞内ATPレベルを測定して生存率の指標とし、肝細胞のアルブミン発現量を定量的PCRで評価し、長期生存に最適な環境を検討する。 人工肝臓の性状は、組織学的評価(光学顕微鏡、電子顕微鏡)に加えて、肝細胞特異的マーカー(AFP, アルブミン, HNf4a, CK18, CK19)と犬で報告されているCYP3A12, CYP2E1を含めて9つのCYP450s(Shou et al., 2003)発現を遺伝子およびタンパクレベルで詳細に解析することで肝細胞の性状を確認する。細胞の機能発現は、糖・脂質・薬物代謝をPAS染色、LDL取り込み能、CYP450活性の測定で確認する。 薬物代謝機能に関しては、現在はテストステロンを用いてCYP活性の有無を検討しているが、その後、アセトアミノフェン、ミタゾラム、フェノバルビタールなどの薬物を人工肝に添加し、動態を検討する。これらのことで薬物を投与する際に必須となる薬物代謝評価系を確立する基盤技術を構築する。
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