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2022 年度 実施状況報告書

エンド-リソソームシステムによるGタンパク質共役型受容体の分解・再利用機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K06133
研究機関東京理科大学

研究代表者

十島 二朗  東京理科大学, 先進工学部生命システム工学科, 教授 (00333831)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードGPCR / エンドサイトーシス / リサイクリング / ゴルジ体 / エンドソーム
研究実績の概要

細胞膜上の受容体はリガンドの結合により活性化されると、エンドサイトーシスにより細胞内へと取り込まれる。その後、取り込まれた受容体は不活性化され、リソソームで分解、もしくはリサイクル経路により細胞膜へ運ばれ再利用される。Gタンパク質共役受容体(GPCR)も、同様にエンドサイトーシスにより不活性化されるが、その基本的な分子機構には不明な点が多い。本研究は、以前に単離することに成功したGPCRのエンドサイトーシス機構に異常のある出芽酵母変異体について、責任遺伝子がコードするタンパク質の機能解析により、GPCRのエンドサイトーシスの諸過程を制御する分子機構を解明することを目的とする。特に、GPCRの分解・リサイクルの基本的な分子機構を解明し、それを新しいGPCR作用薬開発の基盤とすることを目的とする。これらの目的について、昨年度は、①GPCRのクラスリン小胞への取り込み過程における細胞膜脂質成分の役割、②GPCRがクラスリン小胞から初期エンドソームに輸送される機構、③GPCRが初期エンドソームから分解・再利用経路へ輸送される機構、④初期エンドソームで選別されたGPCRが細胞膜にリサイクルされる機構、の4つの課題について研究を実施した。この中で、①については細胞膜の主要構成成分の一つであるPSがエンドサイトーシスされたGPCRの細胞膜へのリサイクリングに重要な役割を果たしていることを明らかにした。②③については、GPCRが初期エンドソームから分解経路に輸送される過程において、ポストゴルジ体輸送経路を介して低分子量Gタンパク質Rab5を活性化する分子機構を明らかにした。さらに、④についてはGPCRがエンドサイトーシスされた後に、ゴルジ体内の特定領域に輸送され、そこで分解、再利用経路へと輸送されることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

研究計画にあげた4つの課題について、①GPCRのクラスリン小胞への取り込み過程における細胞膜脂質成分の役割については、ホスファチジルセリン(PS)を産生することができない変異体を作成し、GPCRのエンドサイトーシス、リサイクリングへの影響を調べた。この結果、PS欠損細胞では、GPCRのエンドサイトーシスが著しく損なわれており、その原因としてゴルジ体から細胞膜へのGPCRの輸送に欠陥があることを明らかにした。この研究成果については、昨年欧文雑誌CSF誌に発表している。②については、クラスリン小胞の形成にEp15/Pan1pタンパク質に着目し、通常は細胞膜に局在するEp15/Pan1pをペルオキシソームに強制的に係留することにより、通常は起こりえないペルオキシソームにおいてエンドサイトーシス過程が進行するといった驚くべき結果を得ることができた。この成果については欧文雑誌JCB誌に発表している。③については、GPCRが初期エンドソームから分解経路へと輸送される過程における、Rab5の活性化機構を明らかにした。特に、ゴルジ体からエンドソームへの輸送小胞であるGGA小胞が重要な役割を果たしており、GGA小胞へのRab5の活性化因子(GEF)であるVps9pのリクルートが重要であることを明らかにした。この成果については、現在論文を投稿中である。さらに、④については、GPCRがリサイクリング経路へと選別される領域がゴルジ体内の特定領域であることを見出した。このゴルジ体内くかくにおいては、生合成経路から輸送されてきたV-ATPaseも局在していると考えられ、選別区画の酸性化が生じていると考えられた。この結果についても、現在論文の査読が終わり修正版を投稿中である。

今後の研究の推進方策

①GPCRのクラスリン小胞への取り込み過程における細胞膜脂質成分の役割、については昨年度明らかにしたPSの機能をさらに詳しく解析する。具体的には、細胞膜におけるPSとPI4Pの交換輸送や、PI4P自体の役割について明らかにしていく。②GPCRがクラスリン小胞から初期エンドソームに輸送される機構、についてはアクチン骨格の主要な制御因子(RhoファミリーGTPase、Formin、コフィリン脱重合因子等の必須遺伝子)について、温度感受性変異体を作成し、アクチン骨格とエンドソームの結合を仲介するタンパク質、およびクラスリン小胞と初期エンドソームの融合に関わるタンパク質を同定する。③GPCRが初期エンドソームから分解・再利用経路へ輸送される機構については、Rab5との物理的、遺伝学的相互作用について解析し、GPCRが初期エン  ドソームから分解・再利用経路へと輸送される機構を明らかにする。④初期エンドソームで選別されたGPCRが細胞膜にリサイクルされる機構については、エンドソームの酸性化がRab6、GARP複合体、レトロマー複合体などの機能にどのような影響を与えるかについて解析する。

次年度使用額が生じた理由

昨年度の残りが7414円と金額が中途半端であったため、次年度繰越とした。残額は金額的には大きくなく、ほぼ計画通りに使用することができた。

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (16件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] Institute of Science and Technology(オーストリア)

    • 国名
      オーストリア
    • 外国機関名
      Institute of Science and Technology
  • [雑誌論文] Reconstitution of functional tight junctions with individual claudin subtypes in epithelial cells2023

    • 著者名/発表者名
      Furuse Mikio、Nakatsu Daiki、Hempstock Wendy、Sugioka Shiori、Ishizuka Noriko、Furuse Kyoko、Sugawara Taichi、Fukazawa Yugo、Hayashi Hisayoshi
    • 雑誌名

      Cell Structure and Function

      巻: 48 ページ: 1~17

    • DOI

      10.1247/csf.22068

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Eps15/Pan1p is a master regulator of the late stages of the endocytic pathway2022

    • 著者名/発表者名
      Enshoji Mariko、Miyano Yoshiko、Yoshida Nao、Nagano Makoto、Watanabe Minami、Kunihiro Mayumi、Siekhaus Daria E.、Toshima Junko Y.、Toshima Jiro
    • 雑誌名

      Journal of Cell Biology

      巻: 221 ページ: 1~15

    • DOI

      10.1083/jcb.202112138

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] ポストゴルジ輸送を介した酵母Rab5ホモログVps21p活性化機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      島村洋輝, 大森唯史, 長野真, 十島純子, 十島二朗
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 塩基性両親媒性薬剤のエンドサイトーシス経路に与える影響の解析2022

    • 著者名/発表者名
      嶋夏槻, 山田 啓史, 野﨑龍, 鱧屋隆博, 長野真, 十島純子, 十島二朗
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 出芽酵母でのヒトケモカイン受容体CCR2Bの発現とリガンドによる活性化2022

    • 著者名/発表者名
      小出万柚, 石坂真琴, 三浦悠一郎, 江川友季子, 秋庭涼, 長野真, 十島純子, 十島二朗
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 出芽酵母Eps15ホモログPan1pはエンドサイトーシスの中後期過程の主要制御因子である2022

    • 著者名/発表者名
      宮野慶子, 燕昇司万里子, 吉田奈央, 長野真, 十島純子, 十島二朗
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
  • [学会発表] エンドソームとリサイクリング機構を介したエンドサイトーシスと分泌の制御2022

    • 著者名/発表者名
      額賀滉矢, 長野真, 十島純子, 十島二朗
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
  • [学会発表] 出芽酵母Rab5 GTPaseは熱ストレス誘導性の変性膜タンパク質除去に必要である2022

    • 著者名/発表者名
      長野真、十島純子、十島二朗
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会,
  • [学会発表] Eps15ホモログPan1pはエンドサイトーシスの後期過程の主要制御因子である2022

    • 著者名/発表者名
      十島二朗, 燕昇司真理子, 宮野慶子, 吉田奈央, 長野真, 十島純子
    • 学会等名
      第55回酵母遺伝学フォーラム
  • [学会発表] 出芽酵母エンドサイトーシス経路の初期/選別区画はトランスゴルジ網内の独立した区画として存在する2022

    • 著者名/発表者名
      十島純子, 塚原彩奈, 長野真, 戸島拓郎, 中野明彦,十島二朗
    • 学会等名
      第55回酵母遺伝学フォーラム
  • [学会発表] Rab11 ホモログYpt31p/32p による分泌, リサイクリングおよび分解輸送の制御機構2022

    • 著者名/発表者名
      長野真, 十島純子, 十島二朗
    • 学会等名
      第55回酵母遺伝学フォーラム
  • [学会発表] エンドサイトーシス-リサイクリング経路における酵母GGA-likeタンパク質Gga2pのドメイン機能の解析2022

    • 著者名/発表者名
      土田渚紗, 菅原千聖, 長野真, 十島純子, 十島二朗
    • 学会等名
      第55回酵母遺伝学フォーラム
  • [学会発表] エンドサイトーシスにおける哺乳類Eps15ホモログPan1pによるアクチンケーブル依存的なクラスリン被覆小胞の輸送機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      錦織礼実, 宮野慶子, 吉田奈央, 長野真, 十島純子, 十島二朗
    • 学会等名
      第55回酵母遺伝学フォーラム
  • [学会発表] エンドサイトーシスにおけるアクチン核化促進因子によるアクチン制御機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      宮野慶子, 燕昇司万里子, 吉田奈央, 長野真, 十島純子, 十島二朗
    • 学会等名
      第55回酵母遺伝学フォーラム
  • [学会発表] 出芽酵母における細胞周期依存的な分泌とリサイクリング輸送の調節機構2022

    • 著者名/発表者名
      長野真, 十島純子, 十島二朗
    • 学会等名
      第74回日本細胞生物学会
  • [学会発表] エンドサイトーシスにおける哺乳類Eps15ホモログPan1pによるアクチン依存的なクラスリン被覆小胞の輸送機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      錦織礼実, 宮野慶子, 長野真, 十島純子, 十島二朗
    • 学会等名
      第74回日本細胞生物学会
  • [学会発表] 出芽酵母を用いたヒトケモカイン受容体のシグナル検出系の開発2022

    • 著者名/発表者名
      江川友季子, 小出万柚, 三浦悠一郎, 長野真, 十島純子, 十島二朗
    • 学会等名
      第74回日本細胞生物学会
  • [学会発表] エンドサイトーシスで働くARF結合タンパク質Gga2pのドメイン解析2022

    • 著者名/発表者名
      土田渚紗, 菅原千聖, 長野真, 十島純子, 十島二朗
    • 学会等名
      第74回日本細胞生物学会
  • [図書] Plasma membrane shaping, Capter 14. Membrane shaping for clathrin-coated pits and endocytosis.2022

    • 著者名/発表者名
      Makoto Nagano, Junko Y. Toshima, and Jiro Toshima (Editor: Shiro Suetsugu)
    • 総ページ数
      14
    • 出版者
      Elsevier
    • ISBN
      9780323899116

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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