研究実績の概要 |
エクソソームは、細胞小器官であるMultivesicular body(MVB)を由来とする細胞外小胞で、近年、様々な生理機能や疾患への関与が報告されている。細胞からエクソソームが分泌されるには、MVBが細胞膜方面へ輸送され、細胞膜と融合する必要があるが、各ステップの分子機構に関しては多くのことが未解明である。最近私は、上皮細胞の異なる細胞膜領域(頂端膜と側底膜)からタンパク質組成の異なる二種類のエクソソーム(頂端膜エクソソームと側底膜エクソソーム)が分泌されることを発見した(Matsui T et al. EMBO Rep., 22:e51475, 2021)。しかしながら、形成されたMVBが、どのような分子メカニズムで各細胞膜方面へ選択的に輸送されるのかは、全くわかっていない。本研究では、MVBの選択的輸送に関わる因子の探索を行い、得られた候補因子の機能解析を行うことで、上皮細胞におけるエクソソーム分泌の分子基盤の解明を目指している。 今年度は、細胞内のオルガネラ、小胞の輸送を制御する低分子量Gタンパク質に着目し、各MVBの細胞膜方面への輸送に関与するRabの探索を行い、頂端膜方面への輸送はRab27とRab37が、側底膜方面への輸送にはRab39が必要であることを見出した。 Rabがオルガネラや小胞の輸送を行うには、エフェクターと総称される特異的な結合分子と複合体を形成する必要がある。そこで私は、Rab39結合分子として知られていたUACAというタンパク質に着目した。UACAはこれまで機能に関する報告がほとんどなかった。UACAノックアウト細胞を用いて詳細な解析を行った結果、UACAはRab39との結合依存的にMVBの側底膜方面への輸送をコントロールすることが明らかとなった。
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