研究課題/領域番号 |
22K07060
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
塚本 健太郎 藤田医科大学, 医学部, 講師 (80434596)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | バルトネラ / Bartonella / 猫ひっかき病 / オートトランスポーター / BafA / 血管内皮細胞 / 血管新生 / VEGF |
研究実績の概要 |
バルトネラ属細菌は様々な哺乳類に保菌されているが、これらのうちいくつかの菌種は人に感染すると血管内皮細胞の増殖を伴う血管腫を形成する。血管内皮細胞はバルトネラにとって感染成立・病態形成に寄与する標的であり、バルトネラの病原性の理解には、菌と血管内皮細胞の相互作用を明らかにすることが重要とされている。我々は最近、血管内皮細胞を直接刺激して細胞増殖を促す菌由来の分泌性因子BafAを発見した。BafAをコードする遺伝子はほぼ全てのバルトネラ属の菌種に保存されているが、それらのアミノ酸配列には多様性が見られ、菌種間による活性や発現の差異については明らかでない。そこで本年度は種々のバルトネラの菌種について血管内皮細胞に対する作用の違いを調べた。まず、最近新たに細菌性血管腫を引き起こすことが報告されたB. elizabethaeについて調べた結果、B. elizabethaeを血管内皮細胞に感染させると細胞増殖が促進され、また本菌由来のBafAにも内皮細胞に対する増殖促進活性・管腔構造形成活性があることがわかった。さらに、猫に由来するB. koehlerae、B. clarridgeiaeと齧歯類に由来するB. doshiae、B. grahamiiについても調べたところ、人への感染が報告されている猫由来2菌種は機能的なBafAをもつ一方、人への感染事例がほとんどないB. doshiaeとB. grahamiiのBafAには細胞増殖促進活性がない、もしくはほとんど発現していないことがわかった。以上より、血管内皮細胞に対する増殖促進作用は菌種間で異なり、そこにBafAの活性や発現が関係していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
バルトネラ属細菌がもつ病原性におけるBafAの関与を明らかにすることを目的に、種々の菌種間比較を行い、2報の論文にまとめた。これらの成果を雑誌に掲載するために多くの時間を要したため、当初予定していた「BafAとその受容体の複合体構造の解析」および「BafAの活性発現に関わる宿主因子の同定」については若干計画に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
BafA-VEGFR2複合体の構造解析については、安定な複合体が形成されるための組換えタンパク質の設計の最適化を進める。具体的にはBafAおよびVEGFR2について、それぞれの分子内結合ドメインを特定し、それらを用いることで安定な複合体が得られるかどうか検討する。また、活性発現に関わる宿主因子については、すでに候補として考えられている因子をsiRNAによりノックダウンし、血管内皮細胞のBafAに対する感受性が低下が見られるか調べる。また、BafAについてもプロテアーゼによる認識モチーフを改変し、活性に変化が生じるかどうか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」欄で記載したように、論文2報を雑誌掲載するための追加実験に時間を要し、当初計画していた実験が一部実施できなかった。そのため、次年度使用額が生じている。今後は「今後の研究の推進方策」で述べた実験を遂行していくとともに、国際学会での研究発表も予定しているため、昨年度からの繰越分も含めて本年度の予算をほぼ予定どおり使用する見込みである。
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