研究課題/領域番号 |
22K07304
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
荻野 広和 徳島大学, 病院, 講師 (20745294)
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研究分担者 |
三橋 惇志 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任講師 (00833732)
木宿 昌俊 徳島大学, 病院, 薬剤師 (90597501)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | がん免疫療法 / 免疫チェックポイント阻害薬 / 樹状細胞 / 腫瘍内投与 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、樹状細胞の腫瘍内への局所投与と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を併用する複合がん免疫療法の有効性を確立することを目的としている。これまでに、①マウス悪性中皮腫細胞株AB1-HAをBALB/cマウス皮下へ移植したモデルにおいて、この併用療法が優れた抗腫瘍効果を示すこと、②投与スケジュールとしてはICIと樹状細胞腫瘍内投与を同時開始が至適であること、③この併用療法は強いアブスコパル効果を誘導することを明らかにしていた。また、④CD80、CD86のノックアウトマウスより単離したCD80、CD86欠損樹状細胞を用いた実験では、野生型/CD80欠損/CD86欠損樹状細胞のいずれを用いた群においても抗PD-1抗体との併用効果に差は見られなかった。これらの結果は樹状細胞上にCD80、CD86のいずれか一方を発現していれば十分な共刺激がT細胞に入る可能性を示唆していた。 2023年度はまずCD80/CD86ダブルノックアウトマウスの樹立を試みた。具体的にはCD80ノックアウトマウス(CD80-/-CD86+/+)とCD86ノックアウトマウス(CD80+/+CD86-/-)を交配することでCD80/CD86ダブルヘテロマウス(CD80+/-CD86+/-)を樹立、またそれらを再交配することを繰り返すことで最終的にCD80/CD86ダブルノックアウトマウス(CD80-/-CD86-/-)を樹立した。このマウスより単離した樹状細胞はCD80/CD86を共欠損することを確認した。これらを用いてICIとの併用効果を検討したところ野生型樹状細胞と比較し明らかな差を認めなかった。これらの結果は樹状細胞腫瘍内投与とICIの併用効果においては、CD80/CD86とCD28を介した共刺激シグナルとは別のシグナルが重要である可能性を示唆しており、現在さらなる解析を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定として本研究課題の全期間を通じて①樹状細胞腫瘍内投与とICI投与の至適投与スケジュールについての検討、②樹状細胞腫瘍内投与とICI併用療法によるアブスコパル効果についての検討、③治療で誘導されるCD8陽性T細胞の腫瘍に対する細胞傷害活性についての検討、④樹状細胞腫瘍内投与によるCD8陽性T細胞活性化機構の検討、⑤新規複合がん免疫療法の効果規定因子の同定を行う予定としていた。2023年度までにこのうち①と②の解析を行い結果を得た。並行して④についてCD80およびCD86ノックアウトマウス、またダブルノックアウトマウスを用いて検討したところ、当初の予定と異なりCD80/CD86単独欠損あるいは共欠損では表現系に差がないことが明らかとなったため、現在追加の検討を行なっている。このように一部当初の仮説と異なる部分もあるが、全体として当初の予定通り、概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、①ICIと樹状細胞腫瘍内投与の併用効果の機序を解明することを目的に、CD80/CD86とCD28を介した共刺激シグナル以外の経路の意義について解析する。また、これまでの検討では主にマウス悪性中皮腫細胞株であるAB1-HAの皮下移植モデルを用いて行なってきたことから、②これまでに得られた現象が他の細胞株やモデルを用いた場合にも同様に観察されるかについて検討する。具体的にはマウス肺癌細胞株であるLLCやCMT167、マウス大腸癌細胞株であるMC38などを用いる。③次にこの併用療法により得られる抗腫瘍効果がCD8陽性T細胞による抗腫瘍免疫応答に由来することを確認すべく、細胞傷害性アッセイを行う。具体的には治療後の腫瘍組織および流入リンパ節よりCD8陽性T細胞を単離し、in vitroにおいて腫瘍細胞と共培養した際の細胞傷害活性やサイトカイン発現レベルをクロムリリースアッセイやフローサイトメトリーなどにより解析する。④また併用療法の効果を規定する因子を同定するため、種々のマウスを用いた検討の際に得られた腫瘍検体を用いて、治療後の腫瘍浸潤免疫細胞数、各細胞のフェノタイプなどを検討する予定としている。
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