研究実績の概要 |
神経細胞から放出される細胞外小胞エクソソームは,脳内アミロイドbeta(Abeta)代謝に関与することが示唆されているが, アルツハイマー病(AD)アミロイド病態の脳内Abeta蓄積過程におけるAbeta結合エクソソーム量の推移は不明である。2022年度は,脳内Abetaレベルと脳組織中のAbeta結合エクソソーム量の相関解析を行った。脳組織からのエクソソーム回収はショ糖密度勾配遠心法を用い,Abeta結合エクソソーム量測定は,独自に開発したデジタル測定法で実施した。Abeta結合エクソソームのデジタル測定系は,ガングリオシドGM1 に結合するコレラ毒素サブユニットB(CTB)で標識された磁性ビーズでエクソソーム捕捉後に,DNA オリゴ標識された抗Abeta抗体(BAN50)を反応させ,磁性ビーズ/エクソソーム/抗Abeta抗体の複合体を形成させた。その後,蛍光反応試薬と混合し測定チップへ送液し,抗体を標識しているDNA オリゴでICA(Invasive Cleavage Assay)法で蛍光反応させた。最後に測定チップを蛍光顕微鏡で撮影し,蛍光ウェルをカウントすることで,Abeta結合エクソソームの濃度を算出した。脳内Abeta濃度評価にはAbeta ELISAを用いた。3, 6, 9, 12月齢のヒトAPPノックインマウスを用いて上記の解析を行ったところ,脳内Abeta濃度は加齢に従って増加するが,Abeta結合エクソソーム量は逆に減少する傾向がみられた。相関解析を行うとAbeta結合エクソソーム量とAbeta濃度は逆相関を示した(Abeta40: r=-0.66, p=0.007, Abeta42: -0.65, p=0.007)。Abeta結合エクソソームの減少が、Abeta濃度増加とどのようなメカニズムで関連しているかは現在不明で,さらなる研究が必要である。
|