研究課題
同意の得られた健常人12名、ATTRwtアミロイドーシス患者35名、非ATTRwtアミロイドーシス患者68名から血清サンプルを得た。血清中のTTRに対する自己抗体の存在を確認するために、リコンビナントTTRをSDS-PAGEし、PVDFメンブレンに転写して血清を一次抗体としてウェスタンブロットを行なった。全長TTRではTTR monomerに相当する約14 kD付近に明らかなバンドが出現し、dimerやtrimerに相当する高位にも淡いバンドが出現した。これはTTRタンパクは本来安定的な4量体構造をとるが、それが崩れると自己の免疫機構によって異物として認識され、自己抗体が作られることを支持するものである。Shorty TTR(TTRペプチド49-127)のウェスタンブロットではmonomerに相当する約9 kDに加え,20-80 kDの範囲に複数のバンドが出現した。このバンドはshorty TTRのoligomerに対する自己抗体と考えられ、ほとんどの血清サンプルで80 kD付近に共通のバンドが出現するが、サンプルによって高位・数が異なる複数のバンドが出現した。これは体内に多様なshorty TTR oligomerが存在し、これを排除しようとするヒトの免疫機構があることを示している。ATTRwt患者群と非患者群で出現するバンドに特徴的な傾向は見出せなかった。次に、TTRに対する自己抗体を定量的に評価するために、ELISAによる抗体価の評価系構築を試みた。間接ELISAを採用し、TTRタンパクを固相化し、血清、続けて標識ヒトIgG二次抗体を反応させ、TMB基質で発色させた。反応条件を複数検討したところ、wild TTR、shorty TTRとも有意差を持って年齢に比例して抗体価が上昇していく傾向が確認されたが、ATTRwt患者群と非患者群では有意差を認めなかった。
2: おおむね順調に進展している
順調にアミロイドーシス患者および非アミロイドーシス患者からのサンプルが収集されており、ウェスタンブロットおよびELISAの実験系が確立しつつあるため。
これまでの間接ELISAにおいて、TTRタンパクの固相化条件でサンプル間の差に変化がみられており、患者群と非患者群を差別化できる可能性があり、まずELISA反応条件の検討を行っていく。具体的には、TTRタンパク固相化の際にβ-MEなどの変性剤を用いる方法(β-ME ELISA)や、サンドイッチ法で血清を固相化し、至適な条件でTTRタンパクを反応させることで多様なoligomerをウェル中で形成させることで、ポリクローナルなTTR自己抗体の検出を目指す。また生体内で形成されるshorty TTR oligomerを特異的に認識する抗体、すなわち生体内で作成される自己抗体と同様なエピトープを認識する抗体の作成を行う。そのためには単純なタンパクの皮下への免疫では目的とする抗体が形成されない可能性があるため、shorty TTRのcDNAを含む発現ベクターを作製し、ベクターを免疫動物に直接投与するDNA免疫法を用いる予定である。
当初の計画で見込んだより安価に研究が進んだ為、次年度使用額が生じた。
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