研究課題
本研究では、1型糖尿病(T1D)発症予防を目的として、腸管炎症による腸内環境変化の誘導を契機としたT1D発症メカニズムの解明と、この腸炎誘導T1D発症モデルにおいて樹状細胞(DC)等の免疫細胞の代謝制御を通じた「免疫代謝療法」による予防的治療への展開を目指したものである。1) T1D発症抵抗性マウスでの腸炎モデルによるT1D発症検討NOD遺伝子を有するもT1D発症抵抗性マウス(雄性NODマウス、NOD-lprマウス、Ins1欠損NODマウス)に対して、腸管感染を模倣するDSS投与による腸炎モデルの実験系を用いて腸管バリア破綻や腸管透過性亢進などを惹起することでT1D発症を誘導できるかどうかを検討した。すなわち、3%DSSを各8週齢のT1D発症抵抗性マウスに継続的に7日間飲水投与する投与群と非投与群で検討した。各T1D発症抵抗性マウスでフローサイトメトリーによる表面分子や細胞内分子による細胞分画の検討(活性化マーカーCD44, CD69やメモリーマーカーCD44hiCD62Lhiなど)した結果、活性化マーカーの上昇を認め、雄性NODマウスやIns1欠損NODマウスでは発症するマウスを認めたが、NOD-lprマウスでは発症を認めなかった。2) NOD-lprマウスでのhomeostatic proliferationの誘導による発症誘導の試みNOD-lprマウスは全く膵島炎や糖尿病発症を呈さないマウスであるが、DSS誘導腸炎により膵島炎の誘導が明らかになった。そこでさらにサイクロフォスファミド(CY)投与によるhomeostatic proliferationを介した免疫バランスの偏位により、一部のマウスで糖尿病発症まで誘導できることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
特にありません。
NOD-lprマウスは全く膵島炎や糖尿病発症を呈さないマウスであるが、DSS誘導腸炎により膵島炎の誘導が明らかになり、さらにサイクロフォスファミド(CY)投与によるhomeostatic proliferationを介した免疫バランスの偏位を惹起することで、一部のマウスで糖尿病発症まで誘導できることを見出した。しかし、全マウスが発症するわけではないため、糖尿病発症マウスの糞便移植を実施することでさらに発症誘導が可能かどうかを検討し、発症メカニズムの解明を進めていく予定である。
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Journal of Diabetes Investigation
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