研究課題/領域番号 |
22K07479
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
小谷 和彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (60335510)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | HDL機能 / 脂質 / 脂質取り込み / 危険因子 / risk factor / risk management / common disease / コモンディジーズ |
研究実績の概要 |
動脈硬化性疾患のマネジメントにおいて、beyond low-density lipoprotein(LDL:低比重リポ蛋白)コンセプトが掲げられ、残余リスクの研究が進みつつある。こうした中、高比重リポ蛋白(high-density lipoprotein:HDL)の機能にも注目が集まっている。HDL機能の一つとして脂質引き抜き能は検討に値する。我々は、HDLに特異的に親和するリン脂質を用い、検体のHDLの脂質引き抜き能に対する測定系を新規に考案し、動脈硬化病態においてその測定意義を検討している。本年度は、動脈硬化の基盤病態で、地域で好発する肥満や糖尿病について検討した。まず、体格指数のbody mass index(BMI)を広く有する集団(76人、平均年齢=51歳、男性=40%、平均HDL-コレステロール=57 mg/dL、平均BMI=25 kg/m2 [最小-最大=16.6-37.4])において特異リン脂質引き抜き能を測定したところ、その平均値は1.07であった。BMIと同引き抜き能とは負の相関を示した(r=-0.31、p<0.01)。この結果は肥満病態におけるHDL機能低下の潜在を示唆する。次いで、糖尿病集団(18人、平均年齢=52歳、男性=53%)とその対照集団(70人、平均年齢=49歳、男性=37%)を設定して比較検討した。対照集団と比べたところ、糖尿病集団は、HDL-コレステロール値(平均56対58 [対照] mg/dL)に有意な差を示さなかったが、特異リン脂質引き抜き能の低値を示した(平均0.98対1.07 [対照]、p<0.05)。この結果は、糖尿病におけるHDL機能低下の潜在を示唆している。本測定系は動脈硬化基盤病態の解析に資すると思われ、さらに検討を蓄積し、HDL特異リン脂質引き抜き能からみた動脈硬化予防に関する提案を目指したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アッセイパフォーマンスは良好であり、また対象者を集積しての検討が進んできている。
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今後の研究の推進方策 |
対象者数を増やすとともに、疾患種も広げて、多面的に検討する予定である。
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