研究課題
【目的】純粋自律神経不全症 (pure autonomic failure: PAF)は,レビー小体病理を背景とする,孤発性,成人発症,緩徐進行性の自律神経系の変性疾患であり,臨床的には起立性低血圧,膀胱・性機能障害などの自律神経症状を示すが,ほかの神経症状は伴わない.当施設で長期経過を観察し,剖検をえられた2例の特徴を検討する.【方法】症例1は死亡時88歳男性である.60代から頻回なめまいとふらつき,失神があり,便秘,発汗障害,嗅覚低下も出現した.途中,軽度認知機能障害を指摘された.その後,心原性脳塞栓症を発症,嚥下性肺炎で死亡した.症例2は死亡時85歳男性である.73歳時に高度の便秘と動揺性血圧が出現,81歳頃から,起立性低血圧や尿失禁,夜間徘徊が出現した.85歳時には認知機能低下が指摘され,同年,尿路感染症により死亡した.【結果】両症例ともに,肉眼所見では青斑核に高度の脱色素を認めたが,中脳黒質の脱色素は比較的軽度であった.組織学的には副腎周囲脂肪織内神経束や交感神経節,中間外側核や後根神経節,迷走神経背側核,延髄網様体,背側縫線核,青斑核,黒質,視床下部,島回,マイネルト基底核,移行嗅内野,海馬CA2,前帯状回,前頭・側頭・頭頂葉にレビー小体病理を認め,DLBコンセンサスガイドラインで辺縁系ないしは新皮質型に該当する広がりであった.【結論】両症例は,我々が提唱しているレビー小体病理の進展仮説であるbrain-first versus body-first仮説においては後者に該当するが,黒質が比較的保たれていたことが特徴である.また,海馬CA2のレビー小体病理が相対的に強い点は,PAFの晩期には認知機能にも留意が必要であることを支持する所見である.
2: おおむね順調に進展している
結果が出ており、さらに同様の症例が追加され、データが増えてきており、順調である。
他のコホートで、対象疾患が多いことがわかり、研究に広がりが出た。そちらの検索も進めたい。
コロナ禍にて、旅費が使えず、次年度に残したかった。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
Neurochemistry International
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