研究課題/領域番号 |
22K07721
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
粟井 和夫 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (30294573)
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研究分担者 |
福本 航 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (00726870)
大下 慎一郎 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (50508132)
川下 郁生 広島大学, 医系科学研究科(医), 共同研究講座准教授 (70309657)
檜垣 徹 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (80611334)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | COVID-19 / 胸部CT / 肺野病変 / Radiomics |
研究実績の概要 |
研究1年目は、COVID-19患者のCTスキャンで肺領域を抽出(セグメンテーション)する深層学習アルゴリズムを開発した。2年目の2023年度は、各症例において、抽出した肺領域に対してRadiomics解析を行い、Radiomicsにより異常陰影を数段階に分類させ、これが放射線科医による視覚的な陰影の分類と対応させることが可能かについて検討を行った。Radiomics解析は1症例あたり6-7時間の時間がかかるため、CTで肺野に異常を陰影が存在するCOVID-19症例の91例のうち無作為に20症例を選択して予備的解析を行った。Radiomics解析の以下のフローで行った。1) CT画像の入力、2)1年目に開発した手法による肺野領域を抽出、3)肺野にROI(32×32マトリクス)を設定する、4)ROIごとに特徴量を測定する、5)算出された各特徴量を階層的クラスタリングにより分類。解析に用いた特徴量としては、Run Entropy, X90 percentile、Gray level Non Uniformity等であり、93種類の特徴量について解析を行った。階層的クラスタリングの結果、Radiomics特徴量により肺野陰影を4種類に分類でき、これは視覚的には、それぞれ 1)浸潤影(背景の血管陰影が認識できない程度の肺野濃度の上昇)、2) 明瞭なすりガラス陰影(背景の血管陰影が認識可能であるが、明らかに肺野濃度が上昇しているもの)、3) ごく軽度のすりガラス陰影(正常肺よりもわずかに濃度が上昇しており陰影境界が不明瞭なもの)、4) 正常な肺野、に対応していた。単独で陰影分類に大きく影響を及ぼす特徴量はなかった。 以上より、Radiomicsにより、放射線科医医師が実施する視覚的評価に対応した陰影分類が可能なことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1症例にかかるRadiomics解析に非常に時間がかかるため(6時間程度/症例)、症例数をスケールダウンし検討を行ったが(20症例)、Radiomicsにより放射線科医の視覚的分類ともよく合致する分類を実行できることが判明し、当初の計画をほぼ達成した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、放射線科医の視覚評価とRadiomics解析の結果の相関を探索するため、肺野に設定するROIを32x32ピクセルと比較的大きなサイズに設定したが、3年目は肺野陰影をさらに詳細に解析するためROIのサイズを8x8ピクセルにして解析を行う。また、最終的には肺野に異常が存在する91症例について解析を行う。さらにRadiomics解析による重症度はどのような計算をするのが妥当であるかについて探索を行う(例えば、肺全体の体積に対する各陰影分類の体積の割合とするなど)。最終的にはRadiomics解析が、臨床的重症度(例えば、厚生労働省が発行した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き・第9.0 版」の中の重症度分類(臨床的な見地から、重症度を4段階に分けたもの)」とどの程度相関するかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に、新型コロナ感染症が完全に収束していなかったため海外出張を中止したために次年度使用額が生じた。2年度は予定した海外出張を行ったものの、初年度からの予算が累積し次年度使用が生じた。3年度については、データ解析量が多くなることが予測されるので解析用のPCのデータ保存媒体を購入し、データ保存を増強したい。
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