研究実績の概要 |
エカルディ・グティエール症候群(Aicardi-Goutieres症候群(AGS))は脳内石灰化を伴う脳症で発症し、凍瘡様皮疹を伴う自己炎症性疾患である。原因遺伝子としてIFIH1,TREX1,SAMHD1,RNASEH2A,RNSAEH2B,RNASEH2C,ADAR, LSM11,RNU7-1の9遺伝子が同定されⅠ型インターフェロン過剰産生が病態として推定されているが、中枢神経系の炎症の分子機序は未解明で治療法が未確立である。Ifih1変異AGSマウスモデルの検討からミクログリアが中枢神経系炎症に重要である事が知られている。本研究ではIFIH1疾患特異的iPS細胞からミクログリアと神経系細胞を分化誘導・共培養する系などを用い、AGSの中枢神経系炎症の分子機序解明を試みる。 R4年度の成果として、IFIH1変異iPS細胞からミクログリア分化系の開発に成功した。患者由来iPS細胞由来ミクログリアは正常コントロールiPS細胞由来ミクログリアに比べて、Ⅰ型インターフェロンの発現が亢進していた。続いて、サイトカイン産生能、遺伝子発現プロファイル解析に着手した。 また、ミクログリアはマクロファージ系細胞である。作成が技術的に容易ではないiPS細胞由来ミクログリアを補完する目的で、マクロファージ細胞株(iPS-ML)での実験も行い、正常ならびに同患者由来iPS-ML由来マクロファージを作成した。Ⅰ型インターフェロン関連遺伝子発現を検討したところ安定した結果が得られず、レトロエレメント等のIFIH1に対する刺激物質を用いた系など、解析系の改良を要することが判明した。
|