研究課題/領域番号 |
22K07938
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
福村 忍 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30718341)
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研究分担者 |
津川 毅 札幌医科大学, 医学部, 教授 (00631863)
佐々木 祐典 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (20538136)
長濱 宏史 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (20725676)
本望 修 札幌医科大学, 医学部, 教授 (90285007)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 再生医療 / てんかん / 骨髄間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、てんかんモデル動物の慢性期にMSCを経静脈的に移植することにより、MSCのてんかんの治療効果、認知機能への改善効果の検討を行う。また、その機序として、MSCが形成された異常神経回路を正常化するメカニズムを解明することを目的とする。 既に発症したてんかんに対するMSC治療の有効性をてんかん治療の観点から、けいれん重積後にてんかん発作を形成したラットに対し、MSCを経静脈的に投与し、てんかん発作の減少効果を検討した。 けいれん重積後55-59日でけいれんをカウントし、自発けいれん数が同程度になるように2群に分ける。別ラットより分離・培養したMSCを重積後60日目で、経静脈的に投与する。対照群には細胞なしのDMEMを同量投与した。 重積後55日から60日まで(投与前)、重積後91-95日(投与30日後)のRatに対して、それぞれ1日12時間ビデオモニタリングし、自発けいれん数および12時間当たりの脳波上の潜在発作数減少を各群で比較検討したところ、MSC群は、Vehicle群と比べ有意に減少していた。 さらに重積後55日から60日まで(投与前)、重積後91-95日(投与30日後)のRatに対して、それぞれ周波数分析を行い、脳機能低下を評価した。1時間あたりのDelta波 (1-4 Hz), Theta波 (4-8 Hz), Alpha波 (8-12 Hz), Beta波 (12-30 Hz)時間を解析し、合計(DTAB)におけるDelta波の比率(D/DTAB)を比較検討したところ、MSC群は、Vehicle群と比べ有意にDelta波の比率は減少していた。 MSCは、けいれん重積後の慢性期のてんかんに対し、けいれん数および脳波上の興奮性、脳機能低下を軽減させるに有効であると考えられた。現在、統計的処理およびMRI画像、組織的な差を検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
けいれん重積後の慢性期モデルは確立し、MSC投与群と対照群DMEM投与群で、けいれん頻度、電気生理学的な差を認めた。現在、認知機能を種々の行動評価を組み合わせることで多角的に治療効果とそのメカニズムを解析している。 認知機能の評価項目として、モリスの水迷路試験および社会的行動テストの評価を行っている。モリスの水迷路試験では、MSC投与前および投与10週後のラットでそれぞれ5日連続、四分円から目標島までの到達時間を測定し、けいれんによる海馬障害の記憶への影響と移植効果を評価する。社会的行動テストでは、あらかじめラットの入っているオープンフィールド装置に、MSC群もしくは対照群のラットをいれ、臭いかぎ行動や追尾行動といった社会的行動が観察される時間および接触回数をカウントした。それぞれMSC治療前および投与10週後に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、組織的解析および画像解析を行う予定である。 画像解析として、頭部MRIでてんかんによる神経再構築およびMSC改善効果を評価する予定である。まずは7T-MRIを用いて、脳体積の変化、皮質・白質・辺縁系の体積の割合の変化を評価する。さらにマンガン造影で神経再構築により生じた海馬苔状線維萌芽を検出する。Ex vivo MRI Diffusion Tensor Tractography (DTT)により正常群(intact rat)、対照(非MSC)群、MSC群に対し解析を行い、てんかん異常神経回路を同定およびMSC投与による改善効果を検討する。 組織学的解析として観察期間終了(投与10週)後、PBSもしくは1%硫化ナトリウム溶液で灌流を行い、その後、4%パラホルムアルデヒドで固定、抜脳し、凍結切片を作製する。Timm染色(苔状線維の染色)では、染色された苔状線維をグレード(Timm Score)に従い定量化する。NeuNおよびGABA合成酵素(GAD)免疫染色では、stereoinvestigator softwareを用いて海馬神経細胞およびGABAニューロンの定量的評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度(2023年度)は、2022年度に引き続き、主にけいれん重積後慢性期モデルに対する行動評価実験を主に行っており、組織・画像検査に関わる使用額が少なかった。 <使用計画>本研究計画を継続し、動物代、試薬代、培養器具代、MRI使用代、組織染色代などの消耗品に使用する予定である
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