研究課題/領域番号 |
22K08005
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中川 美奈 東京医科歯科大学, 統合教育機構, 准教授 (30401342)
|
研究分担者 |
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30372444)
岡本 隆一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50451935)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 肝線維化 / 慢性肝疾患 / TNFα / ケモカイン / 肝星細胞 |
研究実績の概要 |
本研究計画では(1) 独自の慢性肝疾患患者の前向きコホートデータベースから臨床的に有意な背景因子とバイオマーカーを探索し、(2) TNFα下流で作用する炎症性調節制御分子を肝細胞特異的、及び間葉系細胞特異的に欠損させたマウスを用いて、肝線維化におけるその機能的意義を解析するとともに、肝線維化の過程で当該分子により調節される分子機構を明らかにする。さらに(3)標的分子をゲノム編集したヒトiPS細胞株由来肝間葉系細胞(星細胞様細胞)を誘導し、標的分子が本細胞でも同様の機能を呈することを検証することを目的に下記の研究を行い、今年度の成果として下記を得た。
2014年9月から2023年8月までに登録された1267例のうち、DAA治療前のHCC既往なしかつSVRを達成した1089例を対象としてSVR後の肝発癌および生命予後と代謝異常の関連について検討した結果、SVR時のGGT高値は飲酒や糖尿病の有無に関わらずHCC発癌と関連し、肝線維化進展のない患者においては糖尿病と並ぶ死亡リスクであった。SVR後のGGTレベルは飲酒や糖尿病などの生活習慣因子による誘導だけでなくC型肝炎特異的な酸化ストレスを反映している可能性がある。また、TNFα下流で作用する炎症性調節制御分子の作用に関しては、間葉系細胞特異的に標的分子を欠損させたマウスにおいて、肝障害を与えない状態でも肝星細胞由来ケモカイン産生が亢進し、肝線維化が形成された。さらに下流関連分子を阻害することで、ケモカイン産生を抑制した(第59回日本肝臓学会総会で発表)。引き続き本機構に関わる分子の機能解析を更に進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では抗線維化療法の新規標的分子の探索と開発へ貢献すること目的に、基礎および臨床研究の両面から取り組んでいるが、臨床情報データベースを用いた解析、TNFα下流で作用する炎症性調節制御分子を星細胞特異的に欠損させたマウスの解析について、いずれも2022-23年度までに予定していた研究計画は完了し、次の段階に進めている。
基礎的検討としては、TNFα下流で作用する炎症性調節制御分子を抑制すると、肝障害を与えない状態でも肝星細胞由来ケモカイン産生が亢進し、肝線維化が形成された。さらに下流関連分子を阻害することでそのケモカイン産生を抑制することが示された。標的分子によるケモカイン産生制御に関する分子機構に関しても、現在詳細な解析を進めており、肝線維化診断と治療の標的として有望な分子の同定へと研究を進めている。 また、臨床研究においてもSVR後にGGTが高値の患者は肝発癌や死亡のリスクが高く、慎重なサーベイランスが求められることがデータで示され、現在論文投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
基礎的検討においては、TNFα下流で作用する炎症性調節制御分子が肝星細胞における機能を明らかにする。RNAシークエンスなどの網羅的な発現解析により、その標的分子としても絞り込みは進んでおり、今後は標的分子との機能相関の解析へと進捗させる予定である。同時に、標的分子を欠損および過剰発現するヒトiPS細胞由来星細胞を用いた検証解析、前記データベースを用いた慢性肝疾患臨床検体における検証解析へと進めてゆく予定である。 臨床研究においても、近年、生活習慣因子がリスクとして注目されており、DAAによるSVR後の肝発癌および予後と代謝異常の関連の解明が課題となっている中で、SVR後のGGTレベルは飲酒や糖尿病などの生活習慣因子による誘導だけでなくC型肝炎特異的な酸化ストレスを反映している可能性が示唆され、ひきつづき基礎的な解析と組み合わせて本課題の成果につなげたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由: 試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため、廉価な物品を選択して購入したため。 使用計画: 検討する数と種類とを拡大して解析を発展させて行うため、当初の計画よりも試薬を増量して購入する予定である。
|