研究課題
慢性肝疾患における血小板減少の病因を解明するために、抗血小板抗体を含めた自己抗体が血小板減少に与える影響について検討した。本研究では、重度の血小板減少を伴う肝硬変(LC)患者、一次性免疫性血小板減少症(ITP)患者および健常人を対象とした。ELISPOT法により抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数、ELISAにより血漿中の抗GPIIb/IIIa抗体、B細胞活性化因子(BAFF)濃度、増殖誘導リガンド(APRIL)濃度、フローサイトメトリによりB細胞サブセット分画および制御性T細胞(Treg)を測定し、比較した。抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数は、ITP患者および健常人と比べ、LC患者で有意に多かった (p<0.001)。血小板関連抗GPIIb/IIIa抗体は、ITP患者および健常人と比べ、LC患者で有意に高かった(p<0.01)。 血漿BAFF濃度はITP患者および健常人と比べ、LC患者で有意に高く(p<0.01)、血漿APRIL濃度は健常人と比べ、LC患者で有意に高かった(p<0.001)。LC患者において、抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数および血小板関連抗GPIIb/IIIa抗体は、血漿BAFF濃度と正の相関が認められた。LC患者では健常人と比べ、ナイーブB細胞と形質芽細胞が多く(p=0.005、p=0.03)、形質芽細胞は血漿BAFF濃度と正の相関が認められた。LC患者は、ITP患者および健常人と同様のTreg数であり、差は認められなかった。血小板減少を伴うLC患者では、過剰なBAFF産生により、抗GPIIb/IIIa抗体を産生するB細胞が多くなることが想定され、血小板減少と自己免疫が関連している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
LC患者、ITP患者および健常人の検体から、末梢血単核球を分離して、ELISPOT法で抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数を測定でき、フローサイトメトリでB細胞サブセット分画および制御性T細胞を測定できた。ITP患者及び健常人と比較して、LC患者では抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数が多く認められ、特徴的なB細胞サブセット分画の比率も確認できた。さらに、検体から得られた血漿を用いてB細胞の生存、分化、増殖に関与するBAFFやAPRILの濃度の測定ができ、LC患者では血漿BAFF濃度が高値であり、フローサイトメトリ解析のB細胞サブセット分画との関連性も認められた。慢性肝疾患における血小板減少に自己免疫が関与することが想定できる結果を導き出せたため、おおむね順調に進展している。
血小板減少を伴う慢性肝疾患患者では、抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数が多く認められた。今後は治療前後での抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数の変化、その他の血小板減少と関連する自己抗体の変化を検討する予定である。また、血小板減少と関連する新規自己抗体を検索することも試みる。
本研究の予備実験を行うため、本研究が採択される前の2021年度に他の競争的研究費で消耗品等を購入し、実験を進めていた。本研究が採択された2022年度は本研究で使用する消耗品の多くがすでに揃っており、購入すべき消耗品が少なかったため、次年度使用額が発生した。現在、購入していた消耗品も減っており、追加購入する予定である。また、研究成果が出ており、現在、論文作成を実施している。その際の英文校正、論文投稿費に助成金を使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Platelets
巻: 34 ページ: 2161498
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Annals of Hematology
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