研究課題
本申請研究では、心血管病における生体内におけるナトリウム利尿ペプチド(以下NPと略)前駆体の病態生理学的意義について検討すると共に、糖鎖修飾機序を含むその分泌調節機序に基づいた、内因性NP作用の増強を狙った心疾患の新規治療法の開発を目的としている。本年度は、前年度に作成し、血中でヒトBNPを検出することが出来た心筋特異的ヒトBNP遺伝子発現マウスを用いて、種々の病態におけるにproBNP分泌における翻訳後修飾や代謝についての検討すべく、まずはベースラインの表現系(血圧、心重量、肺重量、心エコーでの心機能など)の確認をした。更にこのマウスを用いて、大動脈弓を縛ることによって心室に圧負荷を加え心不全に至らせるマウスモデルであるTACモデルを作製し、その血中BNP、proBNPの比率を我々の開発した特異的proBNP測定システムを用いて評価したところ圧負荷後の経過でproBNPの比率が変化する傾向を見いだした。このモデルにおける糖鎖修飾関連遺伝子について検討したが、遺伝子発現レベルでは非TAC群と有意な差を認めなかった。引き続きこの病態におけるproBNP分泌制御について検討していく予定である。また同様に他のモデルでの評価も進行中である。また心筋特異的ヒトproBNP発現マウス (hproBNPーTg)についての作製も行ったが、血中でのproBNPの発現量が低く、再度発現量の高いものを得るべく作製している。植物フラボノイド由来で糖転移酵素を阻害する活性を有する化合物が報告されており、それを用いて in vivoでの効果を見る予定であるが、それに先だって、培養心筋細胞を用いて、その化合物の添加による心筋細胞からのproBNP分泌割合に対する効果についてまず検討し、効果があることが確認出来たため、in vivoでの効果を検討し始めている。
2: おおむね順調に進展している
前項での記載のように、proBNPからmature BNPの生成時にproBNPが切断される部位に変異をいれ、 mature BNPが産生されずproBNPのみを分泌するような遺伝子改変マウス(心筋特異的ヒトproBNP発現マウス (hproBNPーTg))の作製については、得られたマウスのtransgeneの発現量が低く、再度打ち込みを行っているところであり、他についても順調に経過しており、実験全体として概ね順調に経過していると考える。
次年度も引き続き研究計画通りに進めていく予定である。なお、前述の心筋特異的ヒトproBNP発現マウス (hproBNPーTg)の作製において、解析に十分な遺伝子発現が得られない場合を想定して、他の遺伝子改変マウスの作製も並行して行っている。
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