研究課題/領域番号 |
22K08201
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
清水 優樹 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (90801887)
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研究分担者 |
室原 豊明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90299503)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リンパ浮腫 / リンパ管新生療法 |
研究実績の概要 |
(課題1)中型・大型動物モデルを用いた前臨床試験 リンパ浮腫に対するリンパ管新生のトランスレーショナルリサーチ、ウサギ、ブタリンパ浮腫モデルの確立についての資料収集を行なった。結果は総説として纏め、科学誌に論文を掲載した(Int J Mol Sci. 2023 Apr 24;24(9):7774.)。動物実験としては、ウサギ耳部リンパ浮腫モデルを作成し、ウサギ皮下組織から抽出したADRCをリンパ浮腫組織に移植した。その後のリンパ浮腫改善経過は、浮腫組織の「厚み」及び「容量」を測定することにより、リンパ浮腫の程度を経時的に定量評価した。治療効果判定は、コントロール群(PBS注入群)と比較検討した。 (課題2)ADRCを用いたリンパ管新生療法の新規治療機序の解明 ADRCを血管内皮細胞と共培養した際に、ADRC由来のミトコンドリアは血管内皮細胞内で観察された。またCx43発現阻害及びLatrunculin A 添加することにより、ミトコンドリアトランスファーが阻害されることが確認された。 一方、ADRCを血管内皮細胞と共培養した際に、血管新生機能(増殖能、管腔形成能、遊走能)がそれぞれ亢進するかWST-1 proliferation assay, Matrigel tube-formation assay, Boyden chamber proliferation assayを用いて評価検討し、共培養群では血管新生能の亢進が認められた。さらにはミトコンドリアトランスファーの機序を阻害することにより、血管内皮細胞の血管新生促進作用が一部キャンセルされるか否かを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験においてはウサギでの有効性評価試験を実施した。 治療機序においても、ミトコンドリアの受け渡し作用が示唆され、今後はさらに詳細に検討してゆく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(課題1)中型・大型動物モデルを用いた前臨床試験 ウサギでの治療効果を確認後は前臨床試験を実施する。ブタでは、リンパ節から遠位と近位の両方に排出される集合リンパ管を3cm片で切除することにより、鼠径部のリンパ管網を分断し2次性リンパ浮腫を誘導する。これらの方法により作成したリンパ浮腫モデルに対して、浮腫組織の厚みや周囲径の計測、MRIを用いたパラメータにより、リンパ浮腫の定量評価を行う。手術前、手術後1日目、及び第1、2、3、4週間後における経時的な変化を測定する。 上記リンパ浮腫モデルに対して、ブタより分離調整したADRCを、リンパ浮腫近位部(リンパ管ネットワーク不全部位)に移植(1匹あたり1x108個を筋注法で10箇所程度に移植)する。なお、我々は、ブタからのADRC分離に関しては、既に実験手技・技術は確立済みである。ADRC移植後のリンパ浮腫改善経過は、経時的に前述の評価項目を用いて評価し、コントロール群と比較検討する。有効性評価とともに、リンパ浮腫組織へのADRC移植による安全性(炎症の惹起、浮腫の増悪、悪性腫瘍の形成の有無)も評価する予定である。
(課題2)マウス尾部リンパ浮腫モデルにおける治療機序解明 ADRCからミトコンドリアの受け取りをしたLEC内ではどのようなシグナルが働き、リンパ管新生効果を発揮しているのかを gene arrayを用いて網羅的に検討する。また、電子顕微鏡などを用いて内因性のミトコンドリアに対する作用なども検討していく予定である。
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