研究課題/領域番号 |
22K08265
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
田中 彩絵 獨協医科大学, 医学部, 助教 (30743067)
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研究分担者 |
有馬 雅史 獨協医科大学, 医学部, 教授 (00202763)
倉沢 和宏 獨協医科大学, 医学部, 特任教授 (30282479)
大和田 高義 獨協医科大学, 医学部, 講師 (30456016)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 間質性肺炎 |
研究実績の概要 |
原因不明の特発性間質性肺炎や膠原病に伴う間質性肺炎の急性増悪による急速進行性(RP)- ILDは予後不良である.しかし,その発症機序は十分に明らかでない.研究代表者は様々な原因で発症するRP-ILDに共通する病理メカニズムとして推定される肺胞・気道上皮細胞―免疫系ネットワークに注目している.本研究は呼吸器系上皮細胞(Club細胞)内2本鎖RNA編集酵素ADAR1の機能異常が劇症型RP-ILDの病態形成にどのように作用し,どのような影響を及ぼしているのかということを当該分野で解明されるべき重要な学術的意義として問う.2023年度は野生型マウスおよびClub細胞特異的にADAR1を欠損させたCC10-Adar1-cKOマウスに対してToll-like receptor(TLR)7の刺激薬剤であるImiquimodの経皮的投与により誘導される自己免疫疾患モデルを作製し,同モデル成立後にTLR7刺激剤であるResiquimodとPolyI:Cを同時に経気道的に投与して解析を行った.解析結果は以下の通りである.(1)組織学的解析;予想に反してAdar1-cKOマウスはWTマウスと比較して肺組織の細胞浸潤の軽減傾向を認めたが,気道周辺に好酸球浸潤の増強を認めた.(2)肺内細胞解析:マウスの肺を酵素処理後に組織内細胞集団を純化抽出し,フローサイトメトリー法で解析したところ, WTマウスと比較してcKOマウスでは活性化リンパ球の減少と組織滞在型肺胞マクロファージの増加を認めた.また,気道上皮細胞のRNAseq解析によりcKOはIL-33の遺伝子発現の亢進を認めたが、他の炎症性ケモカイン群の遺伝子発現は抑制されていた.以上より気道上皮細胞内ADAR1は自己免疫疾患に伴うILD病態進展に対して促進的に働く可能性が考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子改変マウスの産出が予想より少なかったため,解析に使用するマウスの確保が困難であった.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に引き続き2024年度はILDの基盤的分子病態メカニズムの探索的解明を目的として各マウスのILDモデルの肺より気道上皮細胞を純化抽出し,RNAシークエンス法で解析し, 細胞特異的な発現変動遺伝子のプロファイル解析とパスウエイ解析および遺伝子・細胞レベルでクラスタリング解析を行う.以上の解析データの統合的な多変量解析により,気道上皮細胞のADAR1が直接・間接的に産生調節するmicroRNAやmRNAを探索し,間質性肺炎の難治化・劇症化関連遺伝子の発現の特徴を明らかにして気道上皮細胞やADAR1の病理的意義を推定する.
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