研究実績の概要 |
2022年度は92家系の腎疾患症例について遺伝子解析を施行した。そのうち35家系(41.4%)で原因遺伝子が特定できた。内訳は多発性嚢胞腎9例(PKD1, PKD2, PKHD1)、ネフロン癆7例(PHP1, BBIP1, INVS, WDR19, EVC2)、常染色体顕性尿細管間質性腎疾患(ADTKD)5例(UMOD、MUC1)、先天性腎尿路異常(CAKUT)9例(HNF1B, PAX2, GATA3, SALL1、GREB1L)、Dent病2例(CLCN5, OCRL)、renal tubular dysgenesis(RTD)1例(ACE)、尿細管性アシドーシス1例(SLC4A1)、Lesch-Nyhan症候群1例(HPRT1)であった。これらはほとんどが次世代シークエンサーによるパネル解析で同定され、一部は臨床診断から特異的疾患遺伝子解析を施行した。ほとんどが解析結果は6ヵ月以内に返却できた。一部は成人例が含まれるが発症は多くは小児期であった。ADTKDはいずれも成人期に診断されたが、小児期から徐々に変化があり、成人例も診断することで小児遺伝性嚢胞性腎疾患の理解につながると考えられる。ADTKD-MUC1はロングリード(LR)シークエンサーによる診断事例で、遺伝性嚢胞性腎疾患の解析にはやはりLRシークエンサーの併用が不可欠である。ただしコスト面からLRをすぐに臨床応用することは難しいため、代替法の開発を検討している。ネフロン癆症例の内、BBIP1症例は海外事例でこれまでに報告が1例しかなく、国際共同研究で同定できた。RTDは常染色体潜性遺伝疾患で25%の確率で次子再発が予想されるため、遺伝子解析と併せて遺伝カウンセリング体制を構築することが重要であると考えた。
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