研究課題
2023年度は全国の医療機関から常染色体顕性多発性嚢胞腎(ADPKD)、常染色体潜性多発性嚢胞腎(ARPKD)などの多発性嚢胞腎や、常染色体顕性尿細管間質性腎疾患(ADTKD)、ネフロン癆、嚢胞腎を生じうる先天性尿路異常(CAKUT)など、83家系の遺伝子解析を施行した。方法は主にショートリード型次世代シークエンサー(NGS)でのパネル解析を用いた。その結果33家系で原因遺伝子を同定できた(39.8%)。内訳はPKD1(6家系)、PKD2(2家系)、PKHD1(3家系)といった主要な多発性嚢胞腎疾患の他、UMOD(4家系)、MUC1(2家系)のADTKD、HNF1B(4家系、17q1欠失1家系を含む)、PAX2(2家系)、GREB1L(2家系)のCAKUT、NPHP3, WDR19, ANKS6、CEP290(各1家系)のネフロン癆関連シリオパチーなどであった。PKHD1を原因とするARPKDと、PKD1、PKD2を原因とするADPKDは小児期には臨床的に混同されることがあり、網羅的パネル解析はその鑑別に有用であった。両者の鑑別は腎予後の推測、次子や次世代への再発率の推定に極めて重要である。今回、ショートリード型NGSでも2例ADTKD-MUC1を診断することができたが、MUC1の遺伝子配列特性を考慮すると見逃し症例が多く存在することが予想される。当科ではロングリード型NGSによるMUC1変異の検出の他、ショートリード型NGSのデータ解析パイプラインの変更によるADTKD-MUC1の検出率向上に取り組んでいる。また尿中の変異蛋白の検出によるADTKDの簡易スクリーニングシステムの開発も開始しており、現在複数施設に規模を拡大して研究を遂行している。
2: おおむね順調に進展している
全国からの依頼検体の解析が順調に進行している。またADTKD-MUC1の検出率向上に向けた取り組みを行っており、おおむね順調と考えている。治療法の開発にはまだ取り組めておらず、次年度の課題である。
ADTKD-MUC1を標的としたショートリード型NGSでのデータ解析プログラムの開発、尿中変異蛋白を用いたADTKDスクリーニングシステムの研究を進める。小児期の嚢胞腎の実態を明らかにするため、現在までのデータを整理して公開できるように準備を進めていく。
ネフロン癆が保険診療として解析できるようになり、当初予想より受諾数が減少したため。引き続き検体の収集と遺伝子解析を進め、残余分を利用する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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