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2023 年度 実施状況報告書

NASH・肥満発症における肝細胞・肝星細胞のPin1の役割

研究課題

研究課題/領域番号 22K08655
研究機関広島大学

研究代表者

中津 祐介  広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (20452584)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードPin1 / NASH / PPARalpha / FKBP51
研究実績の概要

昨年度から引き続き、肝細胞のPin1がNASH発症に対して与える影響について検討した。
①Pin1とPPARalphaが結合することを見出していたが、PPARalphaのPin1結合部位を同定するためにPPARalphaに6か所存在するSer/ProまたはThr/Pro配列に対して、Alaに置換した変異体を作成した。意外なことに、6か所の部位をAlaに置換してもPin1は、PPARalphaに結合した。このことは、Pin1はPPARalphaに関してはSer/Thr-Pro配列非依存的に結合するか、間接的にPPARalphaに結合している可能性が考えられた。
②in vitroでPPARalphaに与える影響を調べるために、肝細胞AML12を用いて検討したところ、Pin1ノックダウンでPPARalpha agonistによる遺伝子誘導が、軽度ではあるが有意に上昇した。また、PPARalphaの転写活性も同様にPin1ノックダウンにより上昇した。逆にPin1過剰発現により転写活性は抑制された。
③PPARalphaの発現量やリン酸化、局在性等は、Pin1の有無により影響を受けなかった。
④近年、NASHとの関係が報告されているIndian hedgehogの発現がPin1 KOマウスの肝臓で減少していることを見出した。
⑤Pin1は、肝星細胞の活性化に重要であるが、他のプロリン異性化酵素が関与しているかを検討した。その結果、イムノフィリンでもあるFKBP51が肝星細胞の活性化に重要であることを見出した。肝星細胞であるLX-2細胞でFKBP5をノックダウンするとTGFb刺激による細胞外マトリクスの発現誘導は、抑制された。また、FKBP5はSmad3と結合し、そのリン酸化を抑制することも見出した。これと一致して、Smad3の核内移行や転写活性もFKBP5ノックダウンで抑制された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Pin1がPPARalphaに結合することを見出し、その結合様式や機能制御について明らかにすることができた。また、Pin1に加えて、他のプロリン異性化酵素であるFKBP5もSmad3の機能制御を介して肝星細胞の活性化に関与することを明らかにしたから。

今後の研究の推進方策

従来の報告とは異なり、Pin1とPPARalphaの結合は、Ser/Thr-Pro配列に非依存的だった。PPARalphaは、複合体を形成しているので、今後はPn1が他の因子と結合している可能性を考え検討する。さらには、NCoRやCBP等の転写共役因子とPPARalphaの結合がPin1により影響を受けるかを調べる。また、近年NASHとの関係が報告されているIndian hedgehog (IHH)の発現がPin1 KOマウスの肝臓で減少していたため、IHHを発現制御しているHippo pathwayとの関係についても検討を進める。特にYAP/TAZの転写活性、転写因子TEADとの結合に対するPin1の影響などについて調べる

次年度使用額が生じた理由

RNA-seqの結果が、real time PCRにより確認され、また、Pin1によるPPARalphaの機能制御についても予想よりも順調に解析が進んだため、次年度使用額が生じた。一方で、Pin1とPPARalphaの結合様式に関しては、予想と異なる結果が出ており、Pin1がPPARalphaと直接結合しているのか、それとも他の因子を介して結合しているかを調べる必要がある。また、Pin1がPPARalphaの転写活性を制御する機序もChip assay等により調べる。次年度は、これらについて詳細に調べ、論文としてまとめたい。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Hepatic Pin1 Expression, Particularly in Nuclei, Is Increased in NASH Patients in Accordance with Evidence of the Role of Pin1 in Lipid Accumulation Shown in Hepatoma Cell Lines2023

    • 著者名/発表者名
      Kanna Machi、Nakatsu Yusuke、Yamamotoya Takeshi、Kushiyama Akifumi、Fujishiro Midori、Sakoda Hideyuki、Ono Hiraku、Arihiro Koji、Asano Tomoichiro
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 24 ページ: 8847~8847

    • DOI

      10.3390/ijms24108847

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Auraptene Enhances AMP-Activated Protein Kinase Phosphorylation and Thereby Inhibits the Proliferation, Migration and Expression of Androgen Receptors and Prostate-Specific Antigens in Prostate Cancer Cells2023

    • 著者名/発表者名
      Akasaka Yasuyuki、Hasei Shun、Ohata Yukino、Kanna Machi、Nakatsu Yusuke、Sakoda Hideyuki、Fujishiro Midori、Kushiyama Akifumi、Ono Hiraku、Matsubara Akio、Hinata Nobuyuki、Asano Tomoichiro、Yamamotoya Takeshi
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 24 ページ: 16011~16011

    • DOI

      10.3390/ijms242116011

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] プロリン異性化酵素Pin1によるYAP/TAZ機能制御を介したNASH発症機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      中津 祐介、城戸 裕吏、青山 峻也、中西 魅加子、浅野 知一郎
    • 学会等名
      日本糖尿病学会
  • [学会発表] FKBP5はSmad3のタンパク安定性及び局在性を調節することで肝星細胞を活性化する2023

    • 著者名/発表者名
      青山 峻也、中津 祐介、中西 魅加子、浅野 知一郎
    • 学会等名
      日本糖尿病学会
  • [学会発表] プロリン異性化酵素Pin1は、PPARalpha活性と分子シャペロン発現を制御し、NASH発症を促進する。2023

    • 著者名/発表者名
      中津 祐介、神名 真智、中西 魅加子、青山 峻也、浅野 知一郎
    • 学会等名
      日本生化学会
  • [学会発表] プロリン異性化酵素FKBP5は、Smad3リン酸化を促進し、肝星細胞を活性化する。2023

    • 著者名/発表者名
      青山 峻也、中西 魅加子、浅野 知一郎、中津 祐介
    • 学会等名
      日本生化学会

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公開日: 2024-12-25  

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