研究課題/領域番号 |
22K08678
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
島田 朗 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60206167)
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研究分担者 |
及川 洋一 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (30296561)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 細胞性免疫 / 外分泌酵素 / HLA |
研究実績の概要 |
急激な体重減少を伴い1型糖尿病と同様に糖尿病ケトーシス(ケトアシドーシス)を呈したにも関わらず、肥満があり、経過から2型糖尿病と病型分類される症例が存在する。このような症例は近年、Ketosis-prone type 2 diabetes(以下KPD)という疾患概念としてとらえることが提唱されている。これまで我々は、KPDにおいては、1型糖尿病疾患感受性HLAの頻度については対照と差がないが、HLA DRB1*08:03が健常人に比して多いことを見出してきた。このKPD症例では、糖尿病ケトアシドーシスの経過中、急性発症1型糖尿病(AT1D)や劇症1型糖尿病と同様に膵外分泌酵素の上昇をしばしば経験するが、その原因については不明である。これまで我々はKPD患者の DRB1*08:03を有する群と有さない群に分け、膵外分泌酵素値を評価したところ、DRB1*08:03を有する群では有意差をもって高値であることを見出した。さらに膵外分泌酵素高値を示したKPDにおいて、自己免疫性膵炎で上昇することが知られている抗Carbonic anhydraseⅡ抗体(以下CA2抗体)を測定したところ、HLA DRB1*08:03を有するKPDにおけるCA2抗体価は、HLA DRB1*08:03をもたないKPDにおけるCA2抗体価よりも有意に高いことを見出した。このような関係はAT1Dにおいては認めず、KPDに特異的な現象と推察された。以上により、DRB1*08:03をもつKPDにおいて、膵外分泌組織に対する免疫応答が存在する可能性があり、その一因として、CA2が標的抗原として関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のように、膵外分泌酵素高値を示したKPDにおいて、抗Carbonic anhydraseⅡ抗体(以下CA2抗体)を測定したところ、HLA DRB1*08:03を有するKPDにおけるCA2抗体価は、HLA DRB1*08:03をもたないKPDにおけるCA2抗体価よりも有意に高いことを見出し、KPDに特異的な現象と推察された。DRB1*08:03をもつKPDにおいて、膵外分泌組織に対する免疫応答が存在する可能性があり、その一因として、CA2が標的抗原として関与している可能性が示唆された。現在、KPDにおける病勢を反映する(J Clin Endocrinol Metab. 2022 19;107:e2124-e2132)と考えられるインスリンペプチド(B9-23関連ペプチド)反応性T細胞との関係について検討中であるが、本検討を含む細胞性免疫能の評価が十分ではないことから、やや進行が遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで自己抗体の検討により、標的抗原を絞り込んできたが、今後は、細胞性免疫についての検討をさらに進める必要がある。細胞性免疫能、特に抗原特異的T細胞反応性の評価については、これを専任で行う常勤の実験補助者もおり、これまでに行なってきたインスリンペプチドを用いた検討に加え、他の膵臓関連抗原、すなわち、膵外分泌抗原を用いた検討についても合わせて行う計画である。今回見出したCA2については、HLA DRB1*08:03に結合する部分をスクリーニングしている。糖尿病患者のデータベース、血液などの検体管理システムもすでに確立しており、別の研究補助者が常時管理しているが、研究補助者のさらなる増員による効率化を行い、件数を増やせる体制を構築している。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の標的抗原候補についても類似の内容について検討予定であったが、測定のためのキットなどを海外より輸入しており、その入手が先方の事情により遅れたため、次年度使用額が生じた。 今後、KPDにおける病勢を反映すると考えられるインスリンペプチド(B9-23関連ペプチド)反応性T細胞についての検討を含む種々の細胞性免疫能の評価を主軸として研究を進める計画である。
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