研究課題
NEDD4はE3ユビキチンライゲースであり、様々なタンパク質を基質としてその分解に関与している。NEDD4は癌細胞においては、PTENやHER3、MDM2など癌に関連する多数のタンパク質をユビキチン化し、プロテアソーム分解系で分解することが知られている。近年の報告や我々の先行研究から、乳癌細胞においてはNEDD4がエストロゲン受容体(ER)の分解に関与することがわかっており、NEDD4がERの分解制御を通じて、乳癌の増殖やホルモン療法への反応性に関与するのではないかという仮説を考えた。この仮説を検証するために行った前年度までの基盤研究C (19K09079) と本年度の研究から以下のことが確認できた。・複数の乳癌細胞株を用いて樹立したNEDD4欠失ER陽性乳癌細胞において、ERの高発現を認めた。・NEDD4欠失ER陽性乳癌細胞は、タモキシフェン添加やestradiol減量といった乳癌に対するホルモン療法に相当する条件設定において、細胞抑制効果がより増強されることが確認できた。・乳癌患者検体とその臨床情報を用いた臨床病理学的解析において、NEDD4低発現ホルモン陽性HER2陰性乳癌患者のDFS(無病生存期間)とOS(生存期間)がNEDD4高発現患者に比較し良好であった。
1: 当初の計画以上に進展している
前年度までの基盤研究C (19K09079) で得られたデータと、それに引き続き2022年度に継続した実験データから、基本的なデータセットが作成できたことから、ここまでを論文化することとして、2023年1月に出版した。
2022年度の研究により、NEDD4の基本的な役割とホルモン療法治療患者における予後因子としての意義は確認できた。今後はNEDD4のE3 ligaseとしての機能が、どのようにERのエストロゲン依存性転写活性化機能の亢進をひきおこしているのかについて、メカニズムの解明研究をおこなう。
前年度までの実験データと、本年度で追加したデータをもとに論文作成、投稿、出版までを優先したため、実験に関する物品費などの経費が低くなった。また通常は数十万円の費用が必要なopen journalへの投稿であったものの、journalからの申し出により今回は投稿費が不要となったため、この経費も支出がなくなった。
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Cancers
巻: 15 ページ: 539~539
10.3390/cancers15020539