研究課題/領域番号 |
22K08722
|
研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
米戸 敏彦 東京医科大学, 医学部, 客員講師 (10837628)
|
研究分担者 |
善本 隆之 東京医科大学, 医学部, 教授 (80202406)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 間葉系幹細胞 / 培養上清 / 抗腫瘍効果 |
研究実績の概要 |
2022年度は、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清(MSC-CM)の腫瘍増殖への効果について検討した。 ① MSC-CMの腫瘍増殖への効果:まず、ヒト多発性骨髄腫RPMI8226、ヒト乳癌MCF-7、ヒト肺癌A549、マウス扁平上皮癌SSCVIIのがん細胞株に1%FBS存在下でMSC-CMを0~40%加え72時間培養し、腫瘍増殖を生存細胞由来のATP量を発光強度で測定した。その結果、いずれの細胞株においてもこのトロールの培地に比べ、MSC-CMの濃度依存的に腫瘍の増殖が抑制された。次に、マウスSSCVII腫瘍をC3Hマウスに移植後腫瘍が触れるぐらいになった5日後から、MSC-CMおよびそのコントロール培地をその近傍に100 μl5日間連続皮内投与すると、MSC-CM投与により有意に腫瘍径の増大が抑制された。この時、腫瘍組織の新生血管のマーカーでCD31に対する抗体を用いた組織学的解析により新生血管の数も減少していた。 ② MSC-CMによる腫瘍増殖抑制効果の作用機序の解析:MSC-CM中の液性因子について、抗体アレイを用いて網羅的に定量すると、腫瘍増殖の抑制や血管新生の増強効果も報告されているInsulin-like growth factor binding protein(IGFBP)-3,4,6が多く含まれていた。そこで、次に、これらの組換え蛋白質を用いて、上記の腫瘍増殖への影響を調べると、程度の差はあるが、IGFBP-4や-6が抑制効果を示した。さらに、それぞれの抗体を用いて免疫除去したMSC-CMおよびコントロール抗体で処理したMSC-CMを用いて腫瘍増殖への影響を調べると、IGFBP-4を免疫除去すると腫瘍増殖の抑制効果が強く減弱することがわかった。 これらの結果より、MSC-CMは、主にIGFBP-4を介して腫瘍増殖を抑制することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清(MSC-CM)の腫瘍増殖への効果が明らかになってきたので、ほぼ計画の予定通り進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度:MSC-CM中のエクソソームと蛋白質分離後の腫瘍増殖への効果 ① MSC-CMのエクソソームとそれを除いたCMの腫瘍増殖への効果:MSC-CMを超遠心分離した上清を蛋白質、沈渣をエクソソーム分画に分けて、in vitroの腫瘍細胞に加え、腫瘍増殖への効果を比較検討する。エクソソームを除いたCMにIGFBP-3,4,6の抗体を加え、IGFBP-4の他のどの分子がどの程度関与しているか、in vivoの腫瘍形成への効果も検討する。② MSC-CM中のエクソソームmicroRNA解析:上述のエクソソームを、GeneChip miRNA Arrayを用いて網羅的に発現解析を行い、腫瘍増殖促進に関わるmicroRNAの候補を複数選択する。次に、それらのmicroRNAを腫瘍細胞に加えて増殖を促進するか、促進すれば、その標的分子の蛋白質レベルでの発現低下をその抗体を用いてウエスタンブロットにより解析し、作用機序を明らかにする。 2024年度:MSCと腫瘍の共培養系での腫瘍増殖への効果 ① MSCの腫瘍形成への効果: SSCVII腫瘍が触れる位になった時、MSCを静注、MSC-CMは腫瘍近傍に皮内投与し、腫瘍形成の促進効果を比較する。MSCとSSCVII細胞を同一ウェルで接触と、トランスウェルを用いた非接触での共培養系で、単一細胞と比較し腫瘍増殖が促進されるか、蛍光色素CSFEで標識し細胞分裂回数で比較検討する。② 作用機序の解析:無血清培地を用いて共培養の上清を作製し、超遠心分離により上清を蛋白質、沈渣をエクソソームとし、それぞれを腫瘍細胞に加え、どちらが増殖増殖を促進するか調べる。分離後の蛋白質とエクソソームmicroRNAの種類について、網羅的に解析し、関与している蛋白質やmicroRNAを同定し、その作用機序を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
使用金額の端数を合わせることができなかったため、次年度使用が生じた。残金は、次年度の消耗品代に加えて使用する計画である。
|