研究課題/領域番号 |
22K08746
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
今井 一博 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (70396555)
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研究分担者 |
海老原 敬 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20374407)
南谷 佳弘 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (30239321)
鈴木 弘行 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (30322340)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害薬 / Long tail effect / 免疫再構築症候群 / 薬剤誘導型 PD-1 発現細胞運命系譜マウス |
研究実績の概要 |
本研究では、世界初の薬剤誘導型 PD-1 発現細胞運命系譜マウスを用いて、併用療法中の免疫担当細胞の分化・遊走を短期・長期的に追跡し、Long tail effect の機序を明らかにする。薬剤誘導型 PD-1 陽性細胞系譜解析マウスの作製は完了した。ICIs と同時にタモキシフェンを投与すると ICIs 治療時に PD-1 を発現する細胞が赤くなり、短期・長期的に生体内観察できることを確認した。現在、安定して供給できている。本年度は、確立した ICI Combo 治療モデルを用いて、ICI 投与至適タイミングの検討を行なった。(Lewis lung carcinoma) LLC-C57BL マウスモデル(PD1 治療; anti-mouse PD-1 RMP1-14)を使用して、(a) ICI 殺細胞性抗癌剤(cyclophosphamide [CTX], 100mg/kg)Combo day0、(b) ICI Combo day4(ICI を骨髄抑制・回復期 day4 に投与)、(c) CTX 単剤の 3 群で至適タイミングを検討した。免疫関連有害事象と治療有効性は関連し、造血細胞移植後の免疫回復過程で臨床症状が一過性に増悪する免疫再構築症候群も考慮すれば、「骨髄抑制からの回復期間が有効なワクチンおよび ICIs の至適タイミングであり、抗腫瘍活性が高い」と予想したが、(a) ICI Combo-CTX day0(同時投与)の抗腫瘍効果が最も高かった。殺細胞性抗癌剤の骨髄抑制は ICIs 治療において不利に働くことが予想された。腫瘍組織を用いた TUNEL Assay では、CTX 投与翌日では多くの腫瘍アポトーシス細胞を認めたが、骨髄回復期day4 ではその数が減少していたから、殺細胞性抗癌剤によりアポトーシスが起こる間に ICIs を投与することが肝心と思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ICI Combo 治療モデルまたICI 至適タイミングモデルを確立、殺細胞性抗癌剤単剤と比較し有意な治療効果の差を確認した。フローサイトメトリーを用いて、抗腫瘍効果を導く免疫担当細胞を調査・追跡を継続、さらにICI Combo モデル(CTX±ICI day0, 7)において、治療効果に大きな差を認めたマウスの Single-cell RNA sequencing の結果を分析しており、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
仮説に反して、至適タイミングとして ICI Combo-CTX day0(同時投与)の抗腫瘍効果が最も高かったが、殺細胞性抗癌剤単剤と比較し、有意な治療効果の差が存在する。薬剤誘導型 PD-1 発現細胞運命系譜マウスにより、同時投与の福音とも言える腫瘍アポトーシスが誘導される時期での ICIs 治療効果の増強が起こるメカニズムの解明や原因となる免疫担当細胞を調査・追跡できれば、腫瘍免疫環境の動的理解から免疫治療併用化学療法の基礎を確立できると思われる。B16 melanoma Ovalbumin (OVA)-C57BL マウスモデルを確立した。Hot tumor としての B16、Cold tumor としての LLC の対比から、その腫瘍免疫環境による ICI 投与至適タイミングや腫瘍アポトーシス数、効果に関与する免疫担当細胞の差異を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は ICI 投与至適タイミングの検討において、モデルや抗癌剤投与量が安定せず時間を費やし、次年度使用額が生じた。Long tail effect を産む免疫担当細胞を追跡し、Single-cell RNA sequencing を含めたさらなる解析を次年度に本格的に開始するため、生じた次年度使用額を PD1 drug (anti-mouse PD-1 RMP1-14) の追加購入に充てる。
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