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2023 年度 実施状況報告書

創薬を目指した神経膠芽腫の放射線治療抵抗性因子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 22K09272
研究機関千葉県がんセンター(研究所)

研究代表者

井内 俊彦  千葉県がんセンター(研究所), 医療局, 医療局長 (80370881)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードglioblastoma / chemo-radiation / methylation
研究実績の概要

これまで蛋白の発現から、放射線治療によるNFkBを介したM2マクロファージの誘導がproneural から mesenchymalに組織を変化されていること、その過程において、免疫系の賦活とJAK/STST3やSEPRINEなどが重要な役割を担うことを RNAseq による解析から推測し、免疫染色でそれを確認してきた。
2023年度は、放射線治療による epigenetic な変化が、これまで解明してきた治療による微小環境変化に影響しているのか、もし影響しているのであればどの様な役割をになっているのかを、メチル化アレイを用いて解析した。4症例の放射線治療前後のサンプルを用いて、メチル化アレイを施行した。
治療前に比較してメチル化が変化していた部位は intergenic がどの症例でも多かったが、それを除くと、transcription start site (TSS)から1500塩基、exon、TSSから 200塩基、5'UTR、1st.exon の順番に多かった。これは、hypermethylated になっていた部位も、hypomethylated になっていた部位も同様だったが、hypermethylation を認めた CpG の方が多かった。一方、enrichment解析では、GO解析では、biological process に関与する遺伝子群が、cellular component に関与する遺伝子群よりも数も多く差も強く、molecular function に関与する遺伝子群は、これらが最小だった。また、KYCGを用いて機能アノテーション解析を行うと、AB component B2, B3 が75%の症例で認め、放射線治療により従来転写されていなかった遺伝子群が転写されるように誘導されている可能性が、また、HOXB3を同様に75%の症例で認めたことから、放射線治療によるWNTシグナル活性への影響が推測された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの RNA発現、蛋白発現評価に加えて、2023年度は放射線治療による epigenetic な変化をメチル化アレイで網羅的に解析することできた。費用の問題からメチル化アレイを行えた症例は8サンプル(4症例セット)のみであったが、メチル化の変化の傾向は似通っており、一定の傾向を確認することができた。放射線治療による共通したメチル化の変化がどの様な意味を持つのかを検証することで、放射線治療による腫瘍微小環境の変化の推測を可能にした。

今後の研究の推進方策

放射線治療により hypermethylated となった、または hypomethylated になっt遺伝子群が、その後の腫瘍環境にどのような変化をもたらした可能性があるのかを慎重に検証していく。AB component B群や、HOX3Bに加えて、SOX10など上皮系文化に関わる遺伝子にもメチル化の変化を認めており、これらの epinenetic な変化が、実際のタンパク発現にどの様な影響をもたらしたか、これまで蓄積した RNAseq のデータと照らし合わせ、解釈していく。
ただ、メチル化アレイで想定していた以上にメチル化変化が認められたことから、2023年度にはその一部しか十分な解析が行えなかった。2024年度は引き続きそのデータの解析を進め、上記3遺伝子群以外の変化を明らかにする。
これらの遺伝子群の中で、放射線治療耐性への関与が疑われる遺伝子群が明らかになれば、既存の腫瘍組織を用いて免疫染色や methylation specific PCR を用いることで、症例数を増やして解析を行い、実際に臨床像との対比を行うことで、放射線治療耐性克服に向けた治療ターゲットを明らかにしていく。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19 への配慮から、国際学会への参加を見合わせてことにより、予定していた旅費を必要としなかった。2024年度は成果の国際学会での発表、論文作成などに今年度繰り越した研究費を充てる予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Distinct patterns of copy number alterations may predict poor outcome in central nervous system germ cell tumor2023

    • 著者名/発表者名
      Takami H, Satomi K, Fukuoka K, Nakamura T, Tanaka S, Mukasa A, Saito N, Suzuki T, Yanagisawa T, Sugiyama K, Kanamori M, Kumabe T, Tominaga T, Tamura K, Maehara T, Nonaka M, Asai A, Yokogami K, Takeshima H, Iuchi T, Kobayashi K, Yoshimoto K, Sakai K, Nakazato Y, Matsutani M, Nagane M, Nishikawa R, Ichimura K.
    • 雑誌名

      Sci Rep

      巻: 13 ページ: 15760

    • DOI

      10.1038/s41598-023-42842-3.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 初発膠芽腫患者における光線力学療法後の再発形式2023

    • 著者名/発表者名
      井内俊彦、堺田 司, 杉山 孝弘, 横井 佐奈, 瀬戸口 大毅, 細野 純仁, 長谷川 祐三
    • 雑誌名

      日本レーザー医学会誌

      巻: 44 ページ: 109-116

    • DOI

      10.2530/jslsm.jslsm-44_0025

    • 査読あり
  • [学会発表] 放射線治療の中枢神経系有害事象とその対策2024

    • 著者名/発表者名
      井内俊彦
    • 学会等名
      第64回日本肺癌学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] ロボット支援システムを使用した定位的脳腫瘍手2023

    • 著者名/発表者名
      井内俊彦
    • 学会等名
      第82回日本医学放射線学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 脳転移を有する非小細胞肺癌治療における免疫チェックポイント阻害剤と定位的放射線治療2023

    • 著者名/発表者名
      井内俊彦, 長谷川祐三, 瀬戸口大毅, 細野純仁, 堺田司
    • 学会等名
      第32回日本定位放射線治療学会
  • [学会発表] 集学的治療の一端としての転移性脳腫瘍治療 Surgical Neuro-Oncologist の立場から2023

    • 著者名/発表者名
      井内俊彦
    • 学会等名
      第32回日本定位放射線治療学会
    • 招待講演
  • [学会発表] ロボット支援定位脳生検の制度と安全性2023

    • 著者名/発表者名
      井内俊彦, 長谷川祐三, 瀬戸口大毅, 細野純仁, 堺田司
    • 学会等名
      第28回日本脳腫瘍の外科学会
  • [学会発表] 摘出か定位照射か? ディベートから考える転移性脳腫瘍の治療戦略 Surgical Neuro-Oncologist の立場から2023

    • 著者名/発表者名
      井内俊彦
    • 学会等名
      日本脳神経外科学会第82回学術総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 非小細胞肺癌由来脳転移症例における髄膜癌腫症のリスクとその予防2023

    • 著者名/発表者名
      井内俊彦, 長谷川祐三, 瀬戸口大毅, 細野純仁, 堺田司
    • 学会等名
      日本脳神経外科学会第82回学術総会
    • 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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