研究課題/領域番号 |
22K09465
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
土谷 順彦 山形大学, 医学部, 教授 (70282176)
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研究分担者 |
内藤 整 山形大学, 医学部, 講師 (00431643)
成澤 貴史 山形大学, 医学部, 助教 (20594328)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 尿路上皮癌 / メタボローム / メタボタイプ |
研究実績の概要 |
これまで、4つの尿路上皮癌細胞株(T24、RT4、HT1376、ScabER)について、メタボローム解析を行った。Basal subtypeと関連が強いT24、HT1367、luminal subtypeと関連があり低悪性度のRT4、高悪性度のScaBERはそれぞれ特徴的な代謝物のパターンを示すことが明らかになった。今年度は、経尿道的膀胱腫瘍切除術で採取された臨床検体30検体について、メタボローム解析と同時にGATA3、CK5/6、CK20、p53の免疫染色を施行し、その関連性について検討を計画した。メタボローム解析においては、主成分分析で明確に正常組織と腫瘍組織を分離することが可能であった。腫瘍組織で濃度が高かった代謝物はCadaverine、逆に低かった代謝物はProline、Asparagine、1,6-Anhydroglucose、2-Aminobutyric acidであった。Random Forrest法による機械学習により、これら5種類の代謝物を用いることでで正確度0.008で正常組織と腫瘍組織の分類が可能であった。GATA3は低悪性度luminal subtype、CK20はluminal subtypeの分子サブタイプマーカーであり、CK5/6は高悪性度Basal subtypeの分子マーカーである。また、p53発現は高悪性度で化学療法耐性膀胱癌と関連しており、luminal/basal subtype double negative p53-mutant subtypeはより悪性度が高く予後不良であるとされている。現在、臨床検体において、これら4つの分子マーカーの免疫染色について条件設定を行い、全ての検体についての染色が終了している。最終年度は、免疫染色による各分子マーカーの発現ならびに発現パターンとメタボローム解析の結果を解析し、分子サブタイプに特徴的な代謝物・代謝経路の同定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
尿路上皮癌細胞株のメタボローム解析は終了しており、それらのデータに基づいて機械学習による種々の分類モデルを用いたメタボタイプ分類が行われ既に結果が得られている。また、臨床検体30検に関してもメタボローム解析が終了しており、GATA3、CK5/6、CK20、p53の免疫染色が修了している。一方、正酸素と低酸素環境での培養については、低酸素培養による細胞実験の進捗が遅れており、メタボローム解析を行う目処は立っていない。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の実施を予定していた臨床検体を用いた臨床病理学的因子とメタボタイプ分類に関しては、いずれもデータの集積は修了しており、2024年度での解析を予定している。低酸素培養による細胞実験の進捗の遅れについては、2024年度に継続して実施を予定している。また、当初の計画に加えて実施予定とした、臨床検体でのp53、GATA-3、CK20、CK5/6発現解析に関しては、既に免疫染色を終了している。2024年度には、免疫染色による分子マーカーとメタボローム解析結果を比較検討することにより、分子サブタイプに特徴的な代謝物・代謝経路の同定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計上していた旅費であるが、進捗がやや遅れてることもあり、予定していた学会に参加しなかった。また、細胞実験が計画していた成果が得られておらず、メタボローム解析が翌年度に持ち越されたため次年度への繰越金が生じてしまった。ただし、計画の修正により、次年度予算として使用予定としており、研究全体への影響はほとんどないと考えられる。
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