研究課題/領域番号 |
22K09591
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内野 繭代 (森繭代) 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (30570452)
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研究分担者 |
曾根 献文 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (90598872)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 卵巣類内膜癌 / ARID1A / ERV |
研究実績の概要 |
現在がんの解明、克服に至っていない大きな理由としてエピゲノム、特にヒストン修飾の解析が不十分である事が挙げられる。ヒストン修飾の中でヒストンメチル化が最も複雑な遺伝子調節をしている。我々はヒストンメチル化酵素が婦人科がんの治療標的になり得る事を数多く報告したが、どのようにヒストンメチル化が遺伝子を調節し、がん化、進展に関わっているか未解明な部分が多い。またヒストンメチル化酵素阻害剤も様々な癌腫で抗腫瘍効果がある事が報告されているが、その詳細な抗腫瘍メカニズムに関して未解明な部分も多い。ヒト内在性レトロウイルス(human endogenous retrovirus:HERV)はがん化、進展に関わっている事が報告されているが、詳細なメカニズムに関しては未解明である。我々はヒストンメチル化-HERVネットワークにおける発がん、進展メカニズムの解明及びヒストンメチル化酵素阻害剤の抗腫瘍効果におけるHERVの関与について検討を行った。前年度より、子宮体癌細胞株においてPRMT6をノックダウンした後、8種類のERV遺伝子の上昇が認められたのでRNA-seq法によりパスウェイ解析を行ったところ、インターフェロン経路の活性化が認められた。次に卵巣類内膜癌におけるヒストンメチル化-ERVネットワークの検討を行った。まず卵巣類内膜癌の臨床検体を用いて、10種類のヒストンメチル化酵素の発現解析をリアルタイムPCR法で検討した所、ヒストンメチル化酵素EHTM2が正常卵巣と比較して発現の有意な上昇が認められた。EMHT2ノックダウン、EHMT2阻害剤を卵巣類内膜癌に添加した所、アポトーシスを誘導する細胞増殖抑制が認められたが、ARID1A変異が認められる卵巣類内膜癌において、その傾向が顕著に認められた。さらにARID1A変異細胞株においてEMHT2阻害剤を添加するNFκBがより上昇するとともに、19種類のERV遺伝子の上昇が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子宮体癌におけるヒストンメチル化酵素とERVネットワークを解析して論文発表を行った。 卵巣類内膜癌における検討を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
ATAC-seq法とRNA-seq法を用いて、ヒストン修飾を介するクロマチン構造の変化によりERVが活性化するメカニズムを証明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究の試薬等を使用した事と、想定よりも研究が順調に進行したので 結果的に研究費を低く抑える事ができたため。
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