研究実績の概要 |
酪酸投与による胎内高アンドロゲン曝露(PNA)により作成されるPCOSモデルにおけるPCOS発症予防効果を検討するため、離乳直後から酪酸ナノ粒子薬(BNP)を入れた飲料水を与えて効果を検討した。性周期、卵巣形態などの生殖表現型はBNP投与群において有意に改善していた。代謝表現型と腸内細菌叢については現在解析中である。 また、今後の臨床応用を見据え、より効果的かつ実現可能性の高い介入時期を検討するために、PNAモデルにおいて、胎内アンドロゲン曝露が腸内細菌叢形成に与える影響そのものと、出生後離乳までの環境(母獣との接触による腸内細菌叢への影響)とのいずれが出生仔の将来のPCOS発症に影響を与えているのかを検討するために、出生直後に仔を入れ替える里親モデルを用いた検証を行った。胎内高アンドロゲン曝露を受けたが出生後control母に育てられたfPNA仔においては、生殖表現型はPNA仔と同様であったが、代謝表現型はやや改善する傾向にあった。一方腸内細菌叢解析では、fPNAではPNAでは全観察期間においてみられる腸内細菌叢異常が、離乳期~思春期の間においてのみ改善傾向にあった(Kusamoto A, et al. Front Cell Dev Biol 2024)。この結果は、母体への介入により胎内環境を是正することがより有効であるが、もしそれが叶わなかった場合には、成育環境を変え早期の腸内細菌叢へ介入することにより、将来的な代謝表現型の出現は予防できる可能性を示すものである。
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