研究課題/領域番号 |
22K09964
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森本 千晶 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70806801)
|
研究分担者 |
藤原 千春 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (00755358)
竹立 匡秀 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (60452447)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | FPR2 / 歯周病 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、歯周病の病態形成におけるFPR2の機能を明らかにすることを目的に研究を実施している。前年度に、絹糸結紮マウス歯周病モデル(以下、マウス歯周病モデル)を用いた解析から、結紮側では非結紮側と比較し、歯根膜を含む結合組織と歯槽骨周囲の多核巨細胞においてFPR2の発現が亢進することを明らかにした。そこで本年度は、歯周病の病態形成過程におけるFPR2の機能解析を行った。すなわち、マウス歯周病モデルにWRW4(FPR2阻害剤)を連日皮下投与し、歯槽骨吸収に及ぼす影響をマイクロCTにて解析するとともに、組織学的な解析を行った。その結果、WRW4投与群では、PBS投与群(対照群)と比較し、有意に歯槽骨の吸収が亢進することが明らかになった。また、TRAP染色の結果、結紮5日目における歯槽骨周囲の破骨細胞数がWRW4投与群で有意に増加し、さらにHE染色像から歯根膜中の血管数と血管面積を算出したところ、血管数に顕著な変化は認められない一方で、血管面積はWRW4投与群で有意に上昇することが明らかとなった。この結果は、FPR2シグナルによる歯周組織における炎症反応抑制作用を強く示唆している。 一方、前年度の研究結果から、炎症性サイトカイン、特にIL-1βがヒト歯根膜細胞(以下、HPDL)の培養上清中のANXA1(FPR2内因性リガンドの一つ)濃度を亢進させることを明らかにしている。そこで、ANXA1-FPR2シグナルがHPDLの炎症反応に及ぼす影響について検討するために、siRNAの導入により、ANXA1およびFPR2の発現を抑制した細胞を作製し、両分子の発現抑制を遺伝子レベル、タンパクレベルで確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究結果から、マウス歯周病モデルにおいてWRW4の投与による内因性FPR2シグナルの抑制が、絹糸結紮による歯槽骨破壊を促進し、歯根膜における炎症を増悪させることが示唆された。研究実施計画を順次遂行することで、有意義な結果を得ており、来年度にむけ、in vitroでの解析を進める準備も完了していることから、研究は順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、歯周病の病態形成過程におけるFPR2の機能について、FPR2のagonistの投与による影響を検討することにより、検証を加える予定である。 また、令和5年度に作製したANXA1およびFPR2の発現を抑制したHPDLの炎症性サイトカイン刺激に対する反応性を検討することにより、その分子メカニズムの一端を解明する予定である。また必要に応じて各分子の強発現HPDLを作製しさらなる機能解析につなげ、ANXA1-FPR2シグナルの歯周病病態形成に果たす役割について明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の学会が近場の開催もしくはオンラインでの開催だったため、予定していた旅費よりもかからずに済んだため。また実験計画通り概ね順調に進行しているため、予備実験等に使用する消耗品を削減できたため。次年度は、初めの予定より多く抗体等の試薬を用いた研究をする必要性が高くなったため、必要な試薬購入に使用する予定である。
|