研究課題/領域番号 |
22K09990
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
関野 愉 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (40285698)
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研究分担者 |
沼部 幸博 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (90198557)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スクリーニング検査 / 脈波測定 / 唾液 / C反応性タンパク質 / エリビウムYAGレーザー / 超音波スケーラー |
研究実績の概要 |
歯周炎と心血管疾患との関連を評価するため、歯周炎患者に対してエリビウムYAGレーザーまたは超音波スケーラーによる全顎のデブライドメントを行い、その後の血管機能を脈波測定装置により測定し、唾液中のC反応性タンパク質を定量する。その準備として、日本歯科大学大学病院に来院した歯周炎患者6名に対して研究の説明及び書面による同意を得たのち、スクリーニング検査を行った。検査内容は一般的な病歴の採取に加えて、プロビングデプス、アタッチメントレベル、BOP、動揺度、プラークスコアを全顎6歯面について記録し、診断を行った。また、唾液採取法を確認し安定して安静時唾液を採取できるようにした。さらに脈波測定器の使用法も実際に患者さんに対して行うことで確認した。その結果、3名がステージIII,3名がステージIVの歯周炎であった。6名とも設定した適格基準を満たし、準備期間として口腔衛生指導、歯肉縁上スケーリング、専門家による歯面清掃を繰り返し行い、必要に応じて、保存不可能な歯の抜歯、暫間補綴、暫定固定、カリエス処置、歯内治療を行った。そのうち1名は治療の継続を希望せずドロップアウトした。2名に関しては口腔衛生状態等の準備が整ったので6月に割り付けの上、介入を行う予定である。また、新たに来院した4名の患者に関して順次スクリーニング検査を行う予定である。 スクリーニング検査は、臨床研究を行う上でバイアスを最小限にするために重要である。例えば、年齢の制限、残存歯数や歯周炎の重症度の基準設定、糖尿病などの歯周炎に影響する全身疾患や、喫煙者等を除外することで、治療結果に影響する介入以外の要因を極力解除することが可能となる。今後は、月に5名以上の患者をスクリーニングした上で、積極的に介入を続けていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス流行の影響により新たな患者の来院が少なく、また治療する患者数も制限されていた。さらに研究のための来院は患者が希望しないと考え、状況を見ていたため、スクリーニング検査を開始する時期が遅れた。また唾液中のCRPを測定するための試薬の生産が遅れ、入手できていないことも遅れている要因である。CRPの試薬は現在も入手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
2023年前半までは新型コロナウイルス流行のため、治療に制限があり、また研究目的のための来院も患者に依頼しにくい状況であった。しかし5類移行後は徐々に患者数も増え、ほぼ以前の状況に戻ってきたため、介入は研究への協力の依頼も行いやすくなった。したがって、本年度前半から来院した歯周炎患者を積極的にスクリーニングしている。現在の状況からは月に5名以上のスクリーニングを行え、その上数名が研究対象にできたとすると、本年度まで30名を超える患者を確保可能と考えられる。 また、当初は介入研究を2つ行う予定であったが、フルマウスデブライドメントとクアドラントごとのデブライドメントの比較研究は、時間的制限から困難である。したがって、歯周炎患者と健常者の血管機能および唾液中のCRP濃度を比較する断面調査を行うことで代替えとしたいと考えている。具体的には、来院した患者をスクリーニングし、適格基準を満たした歯周炎患者40名と、年齢及び性別がマッチした健常者40名を研究に組み入れ、歯周病パラメータ、脈波測定、唾液採取を行い、比較検討するというものである。この場合は断面調査なので時間的にも制約が少なく、ドロップアウトの心配もなく、また研究課題にも合致している。 CRP試薬の入手遅延に関しては、5月か6月ごろに入手可能という業者の説明であったが、現在のところまだ入手できていない。数ヶ月経って入手できない場合には、CRP同様に炎症のマーカーであるペンタロキシン3の測定を行うことも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度まで附属病院における介入研究を実施できなかったことから、次年度使用額が生じた。 介入に使用する超音波スケーラーのチップ、及びエリビウムYAGレーザーのチップ、唾液中CRP(またはペントラキシン3)の計測用試薬、学会参加費に使用する予定である。
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