研究課題/領域番号 |
22K10270
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
八十川 友紀 (松三友紀) 岡山大学, 歯学部, 博士研究員 (90732800)
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研究分担者 |
仲野 道代 (松本道代) 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30359848)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | バイオフィルム / Streptococcus mutans / 分子シャペロン |
研究実績の概要 |
S. mutans のバイオフィルム形成では、口腔内環境の変化に応じて様々なタンパクが発現することが報告されている。分子シャペロンDnaK は熱ショックタンパク (heat shock protein; HSP) であり、熱ショックで誘導されるストレス応答タンパクで各種細菌種において最も高度に保存されたタンパクの一つであるとされている。S. mutans の表層タンパクの1つであるグルカン結合タンパクA (GbpA) を欠失させた場合、dnaK の発現が上昇したことが報告してきた。さらにDnaK が耐酸性に関与していることを明らかとしてきた。これらのことから、DnaK および GroEL の発現が耐酸性を誘導して酸性下での菌の生育を可能にすることで、S. mutans によるバイオフィルムの形成に影響を与えていることが示された。そこで DnaK が表層タンパクへ与える影響について調べるために、DnaK 過剰発現株およびDnaK 発現抑制株を作製し、コロニー形態、バイオフィルム形成量、バイオフィルムの構造を調べたところ、DnaK 過剰発現株において、コロニー形態の変化、バイオフィルム中の著明な凝集塊が認められた。 これらの結果は、 S. mutans において最も病原性に関与すると考えられている表層タンパクである GTF の発現に関しても DnaK が関与していることが示唆された。さらにタンパクの変異や酸化ストレスを受けた場合、DnaKおよび GroELの発現が上昇し、それに伴い S. mutans の表層タンパクであるグルカン合成酵素(GTF)をコードするgtf の発現も上昇していた。この結果は、DnaKの発現状況が S. mutans のバイオフィルム形成に関連する様々な表層タンパクの発現に影響を与えることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたシグナル受容体についてプロテオーム解析では、スクリーニングができなかった。そのため、RNAシーケシングによる検討が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
シャペロンタンパクDnaK過剰発現株および発現抑制株を用いたRNAシーケシング解析を行う。得られたデータから、シグナル受容体と推定される遺伝子を抽出する。その遺伝子配列を基にシグナル受容体のリコンビナントタンパクの作製する。得られたタンパクを用いて、ゲルシフトアッセイを行いシグナル受容体を決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画であったシグナル受容体が特定できなかったため、予定通りに実験が進まなかったため。今後は、実験方法を変更しRNAシーケシング解析により、シグナル受容体を決定する予定である。
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