研究課題
近年注目を集めている閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、心臓および循環器疾患、精神疾患、代謝疾患を引き起こすことで致死的な影響が出ることで知られている。OSAの成り立ちは複数の要因が混合し明確ではないが、小児期からアプローチすることで将来の重篤化を防ぐことができると報告されている。小児期のOSAは扁桃肥大、低位舌、歯列弓の狭窄、鼻粘膜肥厚、鼻中隔湾曲などが要因として挙げられるが、その中で、低位舌については、現在行われている直接的な検査と異なる方法、すなわち歯科用CT(CBCT)上のHounsfield Unit(HU)を用いた画像的手法にて舌内の筋肉の質を評価することに成功した。その結果、低位舌群患児の舌筋は明らかなHUの低下を認めていることが明らかとなった。また、歯列狭窄を有するOSAに対しては、急速拡大装置(RME)の使用が一部で有効であることが報告されている。しかしながら、鼻粘膜の肥厚や扁桃肥大を有している場合、その効果は著しく低下した。本年の研究では、RMEに併せて筋機能療法(OMT)を行うことで鼻粘膜疾患を有している患児でも有意に鼻腔の通気が改善することが示された。成人の分野においても、OSAと肥満に関わる研究を行った。もともとOSA治療の第一選択は肥満の改善であり、強い関連性は示されてきた。しかしながら、肥満が気道を閉塞するメカニズムについては明らかとはなっていない。今回われわれは、肥満OSA患者の舌と平均的体型のOSA患者の舌を、医科用CT上のHUを用いて比較検討を行い、そのメカニズムを探った。その結果、肥満患者の舌内に著しい脂肪の沈着と脂肪沈着による舌肥大が認められ、舌後方の気道が圧迫される形で狭窄していることが明らかとなった。また、平均的体型のOSA患者は骨格的な要素が気道閉塞を招いていることも明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
共同研究施設からの情報提供と情報共有がスムーズに行われており、研究体制も安定してきている。研究結果は多数で揃ってきたが、論文投稿に遅れが出ている。最終年度では論文作成と新規の研究を並行して行っていくこととする。現在、研究計画通りに進んでおり、概ね順調に進展していると評価した。
論文投稿を行い現在までに明らかとなった新規の知見を広く周知することが必要である。また、本研究での共同研究施設は多分野にわたり、年々国内の多施設に拡充している。そして、各々の施設・領域において、現在進行形で新たな研究が発足し進行している。当科における研究手法は日本国内では他に見ないような独創的なものであるため、ソフトウウェア、ハードウェアを含むIT環境および人的な支援が必須であり、同様な環境を構築し続けることが本研究の継続に大切である。そのため、今後も研究費用に対する支援を求めていきたい。
論文作成、投稿にかかる費用および、解析ソフトウェアのライセンス費用、継続的に研究を行うための環境整備費用が、最終年度に必要となり、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した研究費と合わせて、最終年度に全て使用する予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 4件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 650 ページ: 47~54
10.1016/j.bbrc.2023.02.004