研究課題/領域番号 |
22K10451
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
中島 範宏 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (10567514)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 高齢者 / 災害 / 連帯意識 / 地域社会 |
研究実績の概要 |
今年度は文献調査を主に行った。本研究では災害時に孤立するおそれがある高齢者を対象としているが、災害時に要支援者となり得る障害者や妊産婦、外国人に対する災害時の支援の在り方や自治体等の取り組みについても参考にした。 災害時には医療資源や医療従事者のマンパワーが不足しがちであり、災害時に優先されるべき行動や医療資源の利用方針を定めて困難を克服するためには、様々な市民が納得できる理由が必要であり、同じ地域社会で生活する隣人としての連帯意識が存在していることが必要である。 そこで、今年度行った文献調査の内容を参照しつつ、地域社会や連帯意識のあり方を手がかりに医療資源の共有と分配における倫理的課題について検討した。連帯意識は災害時のみならず、平常時から育まれているべきものであるが、近年においては少子高齢化や家族形態の多様化の影響で地域社会の結びつきが希薄になっている。そのため、市民にとって必要な医療の内容を判断する公共的価値が分断されており、必要な医療資源の輪郭が曖昧になってきている可能性が示唆された。この検討内容は論文としてまとめ、「死生学・応用倫理研究」誌に投稿し、採択されている。 高齢者は避難所への移動が困難である可能性が相対的に高いが、孤立高齢者の「孤立」は避難所へ移動できずに自宅で孤立するという意味にとどまらない。災害に備えるための情報、被災時の避難所や医療機関の状況に関する情報、自分自身の医療情報など、情報の共有・管理から取り残されるという意味での「孤立」も存在すると考えられた。そこで、高齢者に対する情報提供の不足が日常的な医療の場でどのような有害事象をもたらしているかを検討するため、日本医療機能評価機構の医療事故データベースを用いた分析も行った。 また、次年度はWEBアンケート調査の実施を予定しているため、上記のような問題意識も踏まえて調査項目の検討作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、文献調査の実施とWEBアンケート調査に向けた準備を予定していた。文献調査は計画通りに進んでおり、高齢者以外の要配慮者に対する様々な取り組みについて知見を得ることができた。また、文献調査の一部を参照しつつ、医療資源の共有管理に関連した地域社会のあり方や連帯意識のあり方といった問題の本質部分について倫理的な視点から検討し、論文として公表することができた。また、孤立高齢者の「孤立」の重要な課題として情報提供からの孤立に着目し、当初の研究計画には無かったが医療事故データベースを用いて高齢者への説明不足と有害事象との関係について検討し、学会報告を行うことができた。 WEBアンケート調査の準備については調査項目の検討や統計ソフトの購入などを行った。WEBアンケート調査に向けた倫理審査申請はこれからであるが、全体としてはおおむね順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目も文献調査も継続するが、WEBアンケート調査の比重を大きくして取り組む。 WEBアンケート調査の質問票を完成させて倫理審査を行い、本学の倫理審査委員会から承認を得て速やかに実施する予定である。 得られたデータを統計解析し、学会で報告するとともに論文として成果の公表を行っていきたい。 また、本研究のキーワードに関連したテーマを扱う学会にも参加し、様々な知見を得て研究結果の考察に活かしていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に購入予定であった統計解析用のパソコンを2年目に購入することにしたため、その分の費用が次年度使用額として生じた。 また、学会参加について、新型コロナウィルス感染症の影響を考慮して、WEB開催も併用している場合には現地参加ではなくオンライン参加とした。また、現地参加した学会も地元の東京での開催分のみであったため交通費や宿泊費も発生しなかった。そのため、学会参加費しか使用しておらず次年度使用額として生じることとなった。 これらの次年度使用額については、パソコンの購入やWEBアンケート調査の費用に充てるとともに、感染症法で新型コロナウィルス感染症が5類に移行したことによって機会が増える学会の現地参加のための旅費に充てる予定である。
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