フルクトースは天然甘味料として清涼飲料水や加工食品に広く使用されている。ここ数十年で消費量は飛躍的に増加し、代謝疾患の発症要因になることが指摘されている。しかし、その詳細な分子機構については不明な点が多く、予防や治療の観点から解明が強く求められている。 近年、栄養因子による疾患発症の分子機構として,塩基配列の変化によらないエピゲノム変化(DNAメチル化やヒストン修飾など)の関与が注目されている。申請者もフルクトースの悪影響について、エピゲノムの視点からアプローチしてきた。そして、肝臓における代謝異常について、脂肪酸異化作用を担う遺伝子にDNAメチル化異常を報告してきた。 しかし、これら結果は、フルクトース暴露により病気になった組織での解析であり、病気が起きた結果を見ているにすぎない。つまり、病気を形成していく過程において、DNAのメチル化の役割は不明である。正しく発症の分子機構を解明するには、病気になってから組織を研究するのではなく、正常な組織が変化していくメカニズムを研究する必要がある。そこで本研究ではオルガノイドを用いる。 2022年度はヒトiPSオルガノイドの作成が安定しないため、ラット肝臓オルガノイドを用いて予備的検討を行った。ラット肝臓オルガノイドにオレイン酸を48時間作用させ遺伝子発現を解析したところ、FASNやPPARAなどの遺伝子発現に変動が見られた。これらの遺伝子は生体内においてもオレイン酸での変動が報告されている。このことからオルガノイドでも生体の反応が観察されることがわかった。
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