研究課題/領域番号 |
22K11374
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
渡辺 正哉 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (90762633)
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研究分担者 |
渋谷 正史 上武大学, その他(学長), 学長 (10107427)
鵜川 眞也 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (20326135)
植田 高史 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (90244540)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 筋痛症 / VEGF-A / VEGFR1 / TRPV1 / 筋硬度評価 / スポーツ障害 / kinesiophobia |
研究実績の概要 |
我々は,炎症性筋痛の発症メカニズムと関連シグナルの伝達経路の同定を目的に,起炎物質であるカラゲナンを用いた炎症性筋痛症モデル動物を作出し,その疼痛回避行動分析と薬理学的解析を行った結果,局所における血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor, VEGF)-A遺伝子の発現が増加していることが明らかとなり,炎症性筋痛症の急性期および亜急性期において,VEGF受容体1(VEGFR1)とTransient receptor potential vanilloid type 1 (TRPV1)チャネルを介した新たな侵害受容経路があることが示唆された(NeuroReport, 34, 2023). 一方で,実際アスリートにおける筋硬結(筋タイトネス)と疼痛による運動不安(kinesiophobia)との関係についての臨床研究をすすめた.膝関節前十字靭帯(anterior cruciate ligament, ACL)損傷における靭帯再建術後のアスリートでは,膝関節伸筋力が健側と比較し十分(90%以上)回復したにもかかわらず競技復帰できないケースが少なくない.その理由は,メンタルテスト(TAMPA17など)で示されるkinesiophobiaであるとされるが,我々は,膝関節伸筋のタイトネスではなく股関節外旋筋タイトネスにより膝関節伸筋の収縮タイミングに遅れが出ることを明らかにした.これは,ACL損傷のない健常なアスリートにおいても同様の結果が得られたことから股関節外旋筋の筋硬結が膝関節伸筋に何らかの影響をおよぼしたということが示唆された(日本膝関節学会誌,1, 2024).このことは,急性筋痛だけでなく筋硬結(筋タイトネス)のある慢性筋痛症においては遠隔の部位の筋に対して多くのkinesiophobiaが生じる可能性があり本研究の目的であるトリガーポイント,関連痛について興味深い結果であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は炎症性筋痛症の痛覚過敏にVEGF-AおよびVEGFR1が関与することを示した.しかしながら,ヒトでみられる筋痛症および筋・筋膜疼痛症候群(myoficial pain syndrome, MPS )には,筋硬結(taut band, TB)と呼ばれる筋組織に起こる特徴的徴候が存在するが、実験動物でそれを再現するまでには至っていない.そこで,今回の研究目的である,炎症性筋痛におけるTBおよび関連痛について、今年度は臨床研究をおこなった.臨床研究では,大学野球部投手における野球肘と肘関節周囲筋の筋硬度との関係について調査した.野球肘に罹患している患者では,肘 関節内側靭帯の疼痛だけでなく肘関節周囲筋の運動痛による投球障害を呈する.我々は,肘関節内側靭帯と周囲筋の硬度を超音波エラストグラフィー測定したところ,肘関節内側支持機構である尺側側副靱帯の硬度と尺側手根屈筋,および,円回内筋の筋硬度の間で強い相関があることが認められ,筋膜を介した靭帯と筋の機能的連続性と筋硬度の関連性があることを示した(日本スポーツ理学療法学会,2024).さらに,股関節外旋筋タイトネス(TB)が膝関節伸筋出力(疼痛不安と関連)と関係することがわかった(日本膝関節学会,1, 2024).
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今後の研究の推進方策 |
我々は,これまでの臨床研究から,股関節外旋筋,その中でも大腰筋には下肢に対する運動神経だけではなく知覚神経が通過することから,この筋の筋硬結(筋タイトネス)が,この知覚神経を絞扼することにより下肢筋群に対して影響を及ぼしているのではないかと考えている.Jinらは,筋・筋膜疼痛症候群(myoficial pain syndrome, MPS)に罹患している患者の筋硬結(TB)を対象に生検を行い,その組織像に筋線維の増大と球状化が観察されることを報告している (Eur J Pain. 2020;24:1968-1978). そこで,我々は,大腰筋炎症性筋痛モデルにおいてこの所見が観察されるかどうかを確かめたい.さらに,影響が考えられる下腿の筋原線維の形態的および病態生理学的変化について検証して,Jinらが示したヒトで観察されるTBに近い構造をもつモデル動物を確立させた後,この成因について調べていきたい. 臨床研究では,kinesiophobia原因としての大腰筋TBと関連痛との関係について動作分析をすすめていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
動物の筋痛評価として使用する測定機器の納入が諸事情により遅延したため.
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