研究課題/領域番号 |
22K11385
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
村田 哲 近畿大学, 医学部, 准教授 (60246890)
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研究分担者 |
小高 泰 近畿大学, 医学部, 助教 (10205411)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 把持運動 / 頭頂連合野 / 腹側運動前野 / 前頭前野 / 運動意図 / フィードバック制御 / 随伴発射 / 身体意識 |
研究実績の概要 |
本研究は把持運動の意図の生成やフィードバック制御に関わる随伴発射に関わる信号の流れを異なる脳領域間の神経活動のコヒーレンスを調べて、明らかにすることが目的である。ヒトでの先行研究では、運動開始前の意識下のprospectiveな処理過程が、運動意図の生成に影響を与えることが明らかになっている。23年度の実験では新たにサルを訓練して実験を行った。高速液晶シャッターを導入して、物体を意識下のプライミング刺激として提示した。0ms 5ms 7ms 20ms 50msに設定し、7ms以下が意識下プライミングとなる。把持物体は異なる把持運動を必要とする板とレバーを用意した。把持運動の開始前にプライミング刺激を提示し、サルは遅延期間後に物体に手を伸ばす。手が物体に近づいて赤外線センサーを横切るとシャッターが開き物体や手が見える。実際の把持物体がプライミングと一致あるいは不一致の条件を用意した。まず、すべて一致条件のセッションでは、0msの場合は他の条件と比べて運動時間の分布に広がりがみえ全体として長くなっていた。このとき、到達運動の時間はどのプライミング提示時間の場合と同じであり、運動時間の長さの変化は、シャッターが開いてからの運動時間に依存する。いっぽうで、5msあるいは7msのプライミングであっても、意識に上るような20msや50msのプライミングと同じ運動時間であった。意識下のプライミングにおいても、把持運動の企画が行われていると考えられる。また、一致条件と不一致条件が混ざって提示されるセッションで行動実験を行ったが、一致条件と不一致条件の混合セッションでは、不一致条件でいずれのプライミング提示時間でも、運動時間が長くなっており、プライミングが意識下で提示されても、運動の意図形成が可能なことが明らかになった。この結果は、第46回日本神経科学大会においてポスター発表行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度夏までに行われた実験において、サルは右手でタスクをおこなっていたが、オーバートレーニングの傾向が出てきた。具体的には、サルが手がかりとなる刺激に注意を払うことなく、予めどちらかの物体にバイアスをかけて運動の意思決定をする傾向が見られるようになった。特に、手がかりと目標となる物体が一致する場合と不一致の場合が混ざって提示されるセッションにおいて、バイアスのかかった物体に関しては運動時間が常に短くなった。しかし、片方の物体では、プライミングキューが長い時間提示され物体がはっきり見えており、把持物体はキューと同じにもかかわらず、運動時間に2つのピークが見られるようになった。つまり、短い方のピークはキューを手がかりにした計画による運動であるが、長い方はバイアスをかけている物体に対する運動の計画を元にしており、実際の物体とは異なるため修正が必要だったのである。このような状態では、タスクに使う手を左手に変更し訓練を開始した。サルの場合、タスクのシーケンスに関するトランスファーは比較的スムースであるが、左手の運動の学習は新たに必要となる。23年度には、訓練が終了し、行動実験も行った。その後、23年秋には神経活動の記録をするための準備を進めていたが、突然の病死に見舞われた。現在、新しいサルの訓練を行い行動実験の準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
この研究においては行動実験の結果が重要な割合を占めており、これに十分な時間をあてる必要がある。上記の状況であり、今後早急に訓練を終了し行動実験に移る予定である。その後は、可能な限り行動実験を終了させ、頭頂葉のAIP野、腹外側前頭前野、運動前野のF5野の単一ニューロン活動の記録を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は最終年度であるが、引き続き計画を継続する。次年度使用額は26621円で、次年度交付金とともに単一ニューロン記録用電極、ECoG記録用電極、及び、成果発表にあてる予定である。
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