本研究は競技スポーツにおける達成志向性と行動規範の関係を調べることを目的とするが、そのために2023年度の研究においては、競技スポーツの達成志向性を調べる質問紙を作成することを目的とした。日本国内の38大学75団体の大学生競技者を対象として、先行研究に基づき作成した69項目からなる質問紙にオンラインで回答させた。対象となった競技は39競技であった。不備のあるデータを除外して得られた433名の有効回答をデータとして用いた。探索的因子分析(最尤法、プロマックス回転)を行った結果、「退部不安」、「楽しさ・熟達」、「仲間・チーム」、「成績」、「健康・体力」、「社会的有用性」、「将来・職業」という7因子構造が得られた。「楽しさ・熟達」と「成績」の因子間相関は.495という中程度の正の相関を示し、熟達志向性と成績志向性は相反する志向性ではなく両立し得る志向性であることが明らかになった。また、因子得点を用いてクラスター分析(Ward法)を行った結果、「楽しさ・熟達」、「仲間・チーム」、「成績」などの得点が高く積極的に部活動に参加していると考えられるクラスター1、それらも同等に高いが「退部不安」や「社会的有用性」も高く退部することによる不利益を心配しつつ積極的な動機で参加していると考えられるクラスター2、そして「退部不安」は高いが他の因子得点は低く退部することへの不安から参加しているクラスター3という3つのグループに分類された。今後、これらの達成志向性と行動規範の関係を調べる研究を2024年度に実施する予定である。
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