研究課題/領域番号 |
22K11875
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
林 由美 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 講師 (30632707)
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研究分担者 |
石川 哲也 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (10288508)
北森 一哉 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (80387597)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | DOHaD / 妊娠期低栄養 |
研究実績の概要 |
本研究では、妊娠期糖質制限による次世代影響について検討を行った。妊娠期糖質制限食摂取は、胎児数を減少させた。また、妊娠18日目の母および胎児の血糖値を測定したところ、母親の血糖値に変化は認められなかったが、胎児の血糖値は約50%低下した。また、血糖値の減少は、雄に比べ雌において顕著であった。母体から胎児へのグルコース輸送には胎盤が関与していることから、胎盤中のグルコース輸送体(Glucose transporter:GLUT-1およびGLUT-3)の遺伝子発現量を測定したところ、雌におけるGLUT-1 mRNAの有意な低下が認められた。胎児体重は雌の糖質制限食群で低値を示したが、生後7日、14日、21日の体重は雌雄ともに対照群と比べ高値となった。また、6週齢および11週齢における糖負荷試験において、血糖値の有意な上昇が認められたことから、インスリン機能や酸化ストレスの蓄積について検討を行った。インスリンシグナル伝達に関与する遺伝子発現量(insulin receptor substrate 2:IRS-2, glycogen synthase kinase-3 beta:GSK-3β)に有意な変化は認められず、肝臓における酸化ストレスマーカー8-OHdGの蓄積も確認されなかった。以上の結果から、妊娠期糖質制限は胎児数、胎児体重および胎児血糖値の低下を引き起こし、胎盤中のGLUT-1 mRNAの低下が関与している可能性が考えられた。また、これらの影響には性差がある可能性が示唆された。今後は、妊娠期糖質制限が胎児でのみ低血糖を誘引するメカニズムについて、胎盤、肝臓試料等を用いて解析を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
妊娠期糖質制限食摂取により、離乳後の糖代謝に変化が認められていたことから、糖代謝に関連する因子として、インスリンシグナル伝達関連因子の解析を行った。また、血糖値の乱高下は酸化ストレスの蓄積から炎症を惹起し、生活習慣病のリスクになることが指摘されていることから、免疫染色により酸化ストレスマーカーの蓄積を評価した。また、本研究では離乳後の影響について焦点を当てていたが、胎児期における解析を追加したところ、母体から胎児へのグルコース輸送に大きな影響を及ぼしている可能性が示唆された。そこで、胎盤試料を用いてグルコース輸送に関与する遺伝子の測定を実施した。現在、関連する遺伝子発現量およびタンパク発現量測定により、より詳細なメカニズムについて解析を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で用いている糖質制限食はゆるやかな糖質制限であるが、胎児血糖値が約50%低下していたことから、胎児にとっては厳しい糖質制限状態である可能性が考えられる。一方、母体の血糖値に変化が認められなかったことから、母体-胎児の血糖調節に影響を与えている可能性が考えられる。そのため、胎盤、母体および胎児の肝臓試料を用いて、グルコース輸送、糖代謝機能について解析する。また、胎児期における低血糖が成長後の糖代謝に与える影響について、肝臓試料を用いて解析を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度では、遺伝子・タンパク発現解析を中心に実施するため、試薬・消耗品費用が掛かると判断されたため、今年度の使用額を調整した。
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