研究課題/領域番号 |
22K12117
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
大山 剛史 岡山県立大学, 情報工学部, 准教授 (40462668)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 両手運動 / 運動制御 / 脳計測 |
研究実績の概要 |
両手でそれぞれ異なる運動を同時に生成することは、片手だけで運動を生成したり、両手が同じ運動を生成することと比べれば困難である。両手運動が困難な理由について、脳の左右の半球間での情報の干渉が予想されているが、まだ十分には明らかになっていない。 先行研究において、両手運動には脳の補足運動野と呼ばれる部位が関与していることが報告されてきている。また、被験者が自力で両手運動を生成することは困難ではあるが、外部からの手掛かりを頼りにすれば、両手運動を生成すること自体は困難ではないとする研究も報告されている。例えば、ランダムに動く二つの目標を、左右の手で接触しながらなぞることは比較的容易である。しかしながら、運動手掛かりが補足運動野の活動に影響を与えるかどうかについては確かめられていない。 本研究では両手運動における運動手掛かりの有無が、補足運動野の活動に影響を与えるとの仮説を設けた。NIRS装置を用いて両手運動中の補足運動野に相当する脳皮質の血流量の変化を計測し、仮説の妥当性を検討した。実験として、右手で三角の経路の軌道を、左手で円の経路の軌道を生成する運動タスクを設定した。運動の手掛かりの有無を条件として二つの条件を設定した。手掛かりあり条件では、被験者は紙に印刷された経路をなぞって左右の手で運動を生成するように指示された。一方、手掛かりなし条件では、被験者は何も提示されていない状態で左右の手で運動を生成するよう指示された。 8人の被験者からの計測データを解析した結果、運動手掛かりなし条件でのみ、左補足運動野の賦活の統計的傾向が確認された。この結果は、運動手掛かりが補足運動野の活動に影響を与え得ることと、それが両手運動に関与することを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においておおよそ想定した実験を実施でき、かつ、仮説の妥当性を支持し得る結果を得られたことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断している。係る研究成果については近いうちに論文投稿ないしは学会発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
両手運動における再現性の高い現象として、運動の手掛かりの影響だけでなく、タイミングが左右の手で同期されることも報告されている。例えば、左右の手を異なる高さに上げてから机などの上に下ろすように指示すると、ほとんどすべての被験者は左右の手を同時に机の上に下ろす。運動を行っているか行っていないかのオン・オフを左右の手で同時に制御していることが予想されているが、そのときの脳活動については不明である。今後、本研究ではこの現象について脳活動も含めて調査する予定である。 もう一つは、両手運動時の意識の問題について調べる予定である。両手運動において左手の運動は右手の運動に引き込まれやすいことが知られている。左手の運動が被験者の思うとおりに生成されないことは、両手運動における左手は被験者の意識から外れたところで生成されている可能性を示唆するものかもしれない。本研究ではこの推測について実験を通じて検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文掲載料の支出を想定していたが、出版社都合により掲載料が不要となったため、予定よりも支出が減少した。また、被験者への謝礼等、関連する他事業からの支出でまかなえたことも理由として挙げられる。この分の予算については、さらなる研究成果の発表等に充てる予定である。
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