研究課題/領域番号 |
22K12766
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
岡久 稔也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任教授 (60304515)
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研究分担者 |
曽我部 正弘 徳島大学, キャンパスライフ健康支援センター, 教授 (60732790)
獅々堀 正幹 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (50274262)
中川 忠彦 島根県立大学, 看護栄養学部, 講師 (40634275)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 腹水濾過濃縮再静注法 / 発熱 / 施行条件 |
研究実績の概要 |
腹水濾過濃縮再静注法(CART)は、難治性胸腹水に対する安全で有効な治療法であり、今後の癌治療を支える重要な治療法として国内の施行件数は増加傾向にある。しかし、その施行方法は標準化されておらず、最も多い副作用である発熱の発生機序や予防法は明らかとなっていない。我々の開発したCART専用装置(M-CART、2018年)の登場以降、採取した胸腹水を一定の設定条件で全量処理することが可能となった。現在、発熱原因物質の産生抑制のために50 ml/min以下の低流量処理が推奨されているが、CARTの効果を高めるため多量の胸腹水が処理されるようになり、高流量処理による効率化が望まれている。CART施行時の発熱を検討する際には、処理前の胸腹水の性状、処理条件、処理後の腹水の再静注条件、患者の全身状態、発熱予防目的に投与されるステロイドなどの影響因子について総合的に検討する必要がある。そこで本研究では、発熱と①胸腹水中のサイトカイン濃度と蛋白質濃度、②胸腹水の処理条件、③ステロイド投与法との関係を検討して発熱機序を解明し、処理条件とステロイド投与法を最適化することによって、高い蛋白回収率が得られ発熱のない迅速なCART施行法を確立する。 令和4年度は、多施設臨床評価の追加分析と文献検索を行い、回収液中への蛋白質の回収率と濃縮条件との関係を明らかにした。その結果、濃縮設定圧が回収率に影響を及ぼすことが明らかとなったため、濃縮設定圧を最適化するための予備検討が必要となり、模擬腹水(代用血漿)を用いた実験を行い、設定圧が回収液に及ぼす影響を詳細に検討した。また、過去の腹水中サイトカイン測定結果と文献検索の結果をもとに、測定するサイトカインの絞り込みを行った。さらに、最適なステロイド投与法についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多施設臨床評価の追加分析により、腹水の濃縮条件(設定圧)が蛋白質の廃液中への漏出や回収液中への蛋白質の回収率に影響を及ぼすことが明らかとなった。また、回収液の再静注速度が発熱をはじめとする副作用に大きな影響を及ぼす可能性があるという報告がみられた。このため、濃縮条件(設定圧)の最適化を行うための予備検討が必要となり、模擬腹水(代用血漿)を用いた実験を行い、設定圧が回収液に及ぼす影響を詳細に検討できた。 臨床検体のサイトカイン測定に関しては、測定費用削減のためにサイトカインの種類を限定した一括測定が望ましく、本年度は過去の測定結果と文献検索の結果をもとにサイトカインの絞り込みを行い、次年度に現在収集中の検体も加えた測定を行うこととなった。また、臨床評価症例の検討および文献検索の結果より、最適なステロイド投与法についても検討したため、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果をもとに、臨床検体のサイトカイン濃度の測定を行う。また、異なる濾過濃縮条件(処理流量、目詰まり濾過器洗浄液の再処理の有無)と最適なステロイド投与条件でCARTを施行する前向きの臨床評価を行う。処理流量は、高流量処理(100 ml/min)と低流量処理(50ml/min)の2群を設定する。また、培養細胞を用いた様々な処理条件での模擬腹水実験の可能性について検討する。以上より、発熱(体温の上昇度)、他の副作用、蛋白回収率、時間(治療時間、濾過濃縮時間)、サイトカイン濃度(処理の前後、上昇度)、濾過圧の推移を評価して関連性を検討し、CART施行時の発熱機序をサイトカイン濃度と施行条件の観点から解明し、高い蛋白回収率が得られる発熱のない迅速なCART の施行法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)予定していた臨床検体のサイトカイン濃度の測定を、測定費用を削減するために種類を限定して一括して次年度に実施することとなり、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度は、サイトカイン濃度の測定のための試薬や物品が多く必要になるため、次年度研究費(物品費)と合わせて使用する計画である。
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