研究課題/領域番号 |
22K12875
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
須田 康一 藤田医科大学, 医学部, 教授 (10348659)
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研究分担者 |
秋元 信吾 藤田医科大学, 医学部, 講師 (40937124)
宇山 一朗 藤田医科大学, 医学部, 教授 (60193950)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ロボット支援手術 / 遠隔手術 / hinotori サージカルロボットシステム |
研究実績の概要 |
1.遠隔手術支援(現地にいるロボット手術執刀医を遠隔地にいるエキスパートがsurgeon cockpitを介して技術指導する)を実施できるよう、現地と遠隔地の2台のsurgeon cockpitがボタン1つ押すだけで即座に操作権を移行しあえるシステム(dual cockpit system)を構築した。 2.2023年4月7日、東京元赤坂(東京遠隔ロボット実験施設、シスメックス社)-名古屋(本学)間(300km)で、生体(ブタ)を用いた完全遠隔手術(幽門側胃切除、D2リンパ節郭清、体腔内B-I再建)、胃統合モデル(Fasotec)を用いた遠隔手術支援(幽門側胃切除、D2リンパ節郭清、体腔内B-I再建)実証実験を実施した。いずれも遅延31msecで滞りなく手術を完了した。この実験で、1.に記載のdual cockpit systemの安全性も実証した。 3.本学とシンガポール国立大学間(5,000km)を4つの国際海底ケーブル(①SINET main、②SINET back up、③JGN via Hong Kong、④ARENA PAC via Guam)で接続し、遅延を測定したところ、それぞれ①107msec、②107msec、③124msec、④132msecであった。①-④いずれの経路でもドライボックス内での縫合結紮が問題なく実施できることを確認した。①SINET mainを用いて、シンガポール国立大学に設置したsurgeon cockpitから本学の胃統合モデル、生体(ブタ)の幽門側胃切除、D2リンパ節郭清、体腔内B-I再建を実施し(被験者:シンガポール国立大学 2名、本学 2名)、滞りなく手術を完了した。 4.2022年11月から開始した当科での消化器外科領域hinotori手術の実施症例数は、2023年12月までに胃30例、大腸41例、肝胆膵11例となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、surgeon cockpitとoperation unitの間を通常のケーブル(通常モード)およびエンコーダー,デコーダーを介した回路(遠隔モード)の2系統で並列に繋ぎ,2つの系統を容易に切り替えられるようなシステムを構築することが目標であったが、代わりに、安全に遠隔手術支援(現地にいるロボット手術執刀医を遠隔地にいるエキスパートがsurgeon cockpitを介して技術指導する)を実施できるよう、現地と遠隔地の2台のsurgeon cockpitがボタン1つ押すだけで即座に操作権を移行しあえるシステム(dual cockpit system)を構築することができた。また、東京-名古屋間300km(遅延31msec)、シンガポール-名古屋間5,000km(遅延107msec)でhinotori遠隔手術システムの実証実験に成功した。臨床でのhinotori使用経験も順調に積み上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
hinotoriの実臨床での使用経験とこれまでの前臨床試験の良好な結果から、hinotori遠隔手術システムの早期社会実装が期待される。遠隔手術では、通信の遅延と揺らぎの克服が大きな課題であり、大容量専用線の使用、画像圧縮・解凍に要する時間の短縮により、1,000kmを越える距離を隔てた遠隔手術のfeasibilityを証明することができた。今後、更に遅延を短縮するため、100Gbps専用光回線を用いて非圧縮で画像を送受信する方法を確立する。また、hinotori遠隔手術対応機体のPMDA承認取得、安全な遠隔手術環境構築のためのメタバース技術を用いた外科的医療情報の統合、臨床試験による遠隔手術システムの実臨床での安全性確認に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会等発表において2023年度は招待参加が幾つかあったため、当初想定していた旅費が少なく済んだ。2024年度の最終年度にあたりより一層の普及啓発・学会発表のため、繰り越すことにした。
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